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千葉市美術館がリニューアルオープン。常設展示室の新設に加え、企画展「帰ってきた!どうぶつ大行進」もスタート

1995年に開館、今年で開館25周年を迎える千葉市美術館が7月11日にリニューアルオープンする。これまでのスペースに加え、かつて中央区役所が入っていたフロアを拡張し1棟すべてが美術館施設として生まれ変わった。新たな「常設展示室」や体験型の企画スペースの公開と同時に、企画展「帰ってきた!どうぶつ大行進」もスタートした。

「千葉市美術館コレクション名品選2020」より、「1945年以降の現代美術 特集 草間彌生」の展示風景

 1995年に開館し、今年で開館25周年を迎えた千葉市美術館が、7月11日にリニューアルオープン。これまでの施設に加え、中央区役所が入っていたフロアを拡張部分とし、1棟すべてが美術館施設となる。

千葉市美術館のエントランス
「さや堂ホール」の入口

 千葉市美術館の建物は、1927年に設立された旧川崎銀行千葉支店の建築を包み込むように設計。入口から「さや堂ホール」と名づけられた美術館のエントランスに入ると、当時の銀行建築を偲ぶことができる。また、今回のリニューアルで同館1階には新たにカフェとミュージアムショップ「BATICA」も新設された。

千葉市美術館のエントランス
ミュージアムショップ「BATICA」

 4階には新たな施設「子どもアトリエ(つくりかけラボ)」が設置された。「五感で楽しむ」「素材にふれる」「コミュニケーションがはじまる」をテーマとした参加型体験型の施設で、3ヶ月おきを目安に交代する担当作家が参加者とワークショップを行いながら、つねにつくりかけのクリエイティブな状態を見せていくという。リニューアルオープン時の担当は建築家の遠藤幹子で、千葉に伝わる「羽衣伝説」の物語を、オンラインを含めたワークショップを通じて参加者と膨らませていく。

「子どもアトリエ(つくりかけラボ)」の内観

 同じく4階には図書室「びじゅつライブラリー」が設置された。美術にまつわる本4500冊を千葉市美の蔵書のなかから選定し、開かれた閲覧空間を提示する。目的を持って本を探すだけでなく、ただ立ち寄るだけでも新たな美術との出会いができる図書館となっている。また、申し込めば閉架書庫の閲覧も可能だ。

「びじゅつライブラリー」の内観

 5階には、これまでの千葉市美術館にはなかった「常設展示室」が設置された。千葉市美術館はこれまで「千葉市を中心とした房総ゆかりの美術」「近世近代の日本絵画と版画」「戦後の現代美術」という3つのテーマで作品をコレクションしてきた。

 常設展「千葉市美術館コレクション名品選2020」(7月11日〜8月2日)では、この3つのテーマに基づいて展示を実施。「描かれた千葉市と房総の海辺」ではジョルジュ・ビゴーが明治時代に描いた房総の海辺の風景などを、「美人画百花 描かれたひとびと」では菱川師宣や歌川広重、喜多川歌麿といった浮世絵師の肉筆画が一堂に会する。そして「1945年以降の現代美術 特集 草間彌生」では、1950年代〜90年代にかけての同館コレクションを展示。草間の軌跡を各年代の作品からたどることができる。

「千葉市美術館コレクション名品選2020」より、「描かれた千葉市と房総の海辺」の展示風景
「千葉市美術館コレクション名品選2020」より、「美人画百花 描かれたひとびと」の展示風景
「千葉市美術館コレクション名品選2020」より、「1945年以降の現代美術 特集 草間彌生」の展示風景

  5階には「常設展示室」だけでなく「ワークショップルーム」も開設された。同スペースはワークショップやイベント会場としての使用が想定され、隣接する常設展示と連動した企画も可能。美術館が一方的に企画を提供するだけでなく、市民参加型の企画が実現できるスペースとなっている。

「ワークショップルーム」の内観

 7階、8階の企画展示室では、リニューアル記念企画として「帰ってきた!どうぶつ大行進」が9月6日まで開催される。千葉市美術館の1万点を超えるコレクションのなかから、動物表現をテーマにした作品約230点を紹介。2012年に同館で開催された「どうぶつ大行進」のバージョンアップながら、作品を150点以上加えて再構成されている。これには、新たに加わったコレクションや、約30点の初公開作品も含まれる。

 同展は全12章で構成され、その始まりを飾る「はじめに」の章は「病退散!鍾馗大集合!疫病破邪の生きものの表現」と名打たれた。これは、新型コロナウイルスの影響が続くなか、古くから邪気を払うと伝えられてきた古代中国の英雄・鍾馗をテーマにしたもので、仙崖義梵《鍾馗図》(江戸後期)をはじめ14点を展示する。

「帰ってきた!どうぶつ大行進」より、「病退散!鍾馗大集合!疫病破邪の生きものの表現」展示風景

 第2章「麒麟はまだか!? 霊獣──想像上のどうぶつたち」では酒井抱一《唐獅子図屏風(唐獅子唐子図旧衝立のうち)》(1818〜30)や、狩野益信《麒麟図、旭日鳳凰図(狩野派「花鳥人物図帖」のうち)》(1682頃)といった、伝承上の動物をモチーフとした名品を紹介。

「帰ってきた!どうぶつ大行進」より、「麒麟はまだか!? 霊獣──想像上のどうぶつたち」展示風景
「帰ってきた!どうぶつ大行進」展示風景より、酒井抱一《唐獅子図屏風(唐獅子唐子図旧衝立のうち)》(1818〜30)

 第9章「白い鳥、黒い鳥、色トリどり──花と鳥の楽園」では尾形光琳《柳鷺図》(江戸中期)や鈴木其一《柳椿白鷺・水葵白鷺図》(1844〜58)などを、「おわりに」の章「もっと!どうぶつ大行進──むかしもいまも人気者」では、俵屋宗達《狗子図》(江戸前期)や、伊藤若冲《旭日松鶴図》(1755〜56頃)などが展示され、動物とともに生きてきた日本人の軌跡をたどる。

「帰ってきた!どうぶつ大行進」より、「白い鳥、黒い鳥、色トリどり──花と鳥の楽園」展示風景
「帰ってきた!どうぶつ大行進」展示風景より、左から森狙仙《月下猿図》(1798)、伊藤若冲《旭日松鶴図》(1755〜56頃)、伊藤若冲《鶴図》(1789〜1801頃)

 今後の企画展は、「宮島達男 クロニクル 1995-2020」(9月19日〜12月13日)、「ブラチスラバ世界絵本原画展 こんにちは! ヘコとスロバキアの新しい絵本」(2021年1月5日〜2月28日)、(仮称)「田中一村─千葉市美術館所蔵全作品─」(2021年1月5日〜2月28日)が予定されている。

 潤沢なコレクション展示と、誰もが参加できる体験型の企画を楽しめる新たなアートスポットとして、これからの企画に期待したい美術館だ。

「帰ってきた!どうぶつ大行進」展示風景より
「帰ってきた!どうぶつ大行進」展示風景より
「帰ってきた!どうぶつ大行進」展示風景より

編集部

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