昨年6月より、一般市民と政府の抗争が続いてきた香港。その抗争のなかで生まれたアート作品が集結する展覧会「香港の不自由展」が、1月27日に銀座のGallery Qでスタートした。
本展を開催するきっかけについて、同ギャラリーのディレクターである上田雄三はこう語っている。「(香港での出来事について)私たちがテレビで見ていた情報が少なかった。実際に彼らと会って話したら、その真剣で一生懸命だった気持ちに驚きました。その気持を日本の皆さんに身近に感じてほしい」。
いっぽう、日本では昨年、「あいちトリエンナーレ2019」の企画展である「表現の不自由展・その後」をめぐって一連の事件が起きた。「日本でもそのような不自由なことがたくさんあり、いままできちんと伝わっていないことや、香港の人々が考えていることを伝えたらいいなと思って本展を始めたのです」。
本展では、香港人の有志10人によるアイロニックな絵画作品をはじめ、昨年の夏より起きた一連の出来事をまとめたビデオ・ドキュメンタリー、そして立体、インスタレーションが展示。とくに注目したいのは、会場の中央に展示されている《香港民主女神》だ。
本作は、女性抗議者の姿をかたどった高4メートルの彫刻であり、昨年10月に香港の象徴的な景勝地のひとつであるライオンロックの上に建てられた。しかし、建てられてから一日も経たず、その彫刻は親中派もしくは中国政府に壊されたという。本展では、その壊された彫刻の頭の部分のみを展示しており、いかに脅かされても自由を求めるという決意を象徴している。
上田は、「アジアでは民主化はまだ完全なものではなく、日本で当たり前のことは、中国や北朝鮮では違うのです」としつつ、香港で起きている自由や民主主義の追求を「愚公山を移す」と喩えている。「いかに小さなことでも、彼らは自らの行動で山を移すのではないかと思い、今後の活動を見守りたいです」。