1995年、デザイナー・皆川明がファッションブランド「ミナ」を設立。2003年にブランドを「ミナ ペルホネン(minä perhonen)」に改名した。
「minä perhonen」は、フィンランド語から由来するもので、「minä」は「私」、「perhonen」は「ちょうちょ」を意味する言葉。「せめて100年つづくブランドに」というコンセプトから始めたブランドは、ファッションからスタートし、インテリアや食器、空間デザインなどその領域を生活全般へと広げている。
来年25周年を迎えるブランドのものづくりや世界観を紹介する展覧会「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」が、11月15日に東京都現代美術館で開幕した。
本展は、多義的な意味を持つ「つづく」をキーワードに、「実」や「森」「風」「芽」「種」など同ブランドの哲学や創作アイデアを示すセクションで展開している。「つづく」というタイトルは、ブランドの歴史や時間的な連続性を示すものだけでなく、つながる・連なる・手を組む・循環するという意味も持つ言葉だ。
皆川は本展の開催にあたり、「ものづくりをかたちとして始めた25年前から、いまでもそれがどのような記憶になったかということまでとらえて、この展示をつくってきました」とコメント。建築家・田根剛が展示構成、葛西薫がグラフィックデザインを担当した本展では、衣服、インテリア、食器などのプロダクトだけでなく、デザインの原画や挿画、映像など皆川の制作背景を示した作品や資料も展示している。
展示は、ブランドのデザインの原点である「tambourine」に注目した「実」から始まる。「tambourine」とは、25個の小さなドットによって構成された円の刺繍柄。2000-01年の秋冬コレクションで生まれてから、現在家具や食器、インテリアにも応用されている。
洋服が大量に並ぶ「森」では、ブランドの設立当初から2020年春夏コレクションまで、約25年分の衣服が一堂に会する。これらの服は、短いサイクルで大量消費されていくものではない。時代を超えて長く繰り返して使えることが特徴だ。
続く「風」では、同ブランドの服を着ている人々の「日常」をとらえた映像を上映。「芽」では、デザイナー・田中景子と共同で手がけた、生地のためのデザイン画を展示している。
本展のハイライトは、皆川のものづくりの哲学やアイデアを紹介する「種」となる。このセクションでは、ものづくりの過程やその制作風景をオブジェ、映像、言葉など多様な形式で紹介している。
とくに、皆川が構想し、建築家・中村好文が設計した「シェルハウス」のプロトタイプは、本展の大きな見どころだ。「簡素で心地よい宿」をコンセプトにした本作は、フィボナッチ数列から着想を得てユニークな渦巻きの構造となっている。本作について皆川は、「外壁がそのまま内壁を兼ねていくような連続性のある建築物であり、最初の空間で快適な場所をつくることの具体的な表現です」と話している。
皆川が新聞連載のために描いてきた挿画を集中的に紹介する「根」では、その様々な表現活動に焦点を当てている。服とその持ち主との関係性に注目する「土」では、個人が所有している15点の「ミナ ペルホネン」の衣服を、彼らが語るエピソードとともに展示。それぞれの服は、人の身体に馴染んでおり、彼らの人生の出来事を語っている。
展覧会の最後では、「ミナ ペルホネン」がこれまで25年間の活動を写真や皆川のインタビューを通してその軌跡をたどっている。2095年まで続かせていきたいというこのブランドの今後について、皆川は「この25年が終わって、1日が100年とすればまだ朝6時であり、目が覚めたばかりなので、これからますますものづくりの発見ができたいと思います」と語っている。