「あいちトリエンナーレ2019」の一企画である「表現の不自由展・その後」展示中止を検証するため、8月9日に設置されたあいちトリエンナーレのあり方検証委員会。この委員会が主催する「表現の自由に関する国内フォーラム」が、9月21日に愛知芸術文化センターで開催された。
これまで、同検証委員会は2回の会合を実施。この日のフォーラムでは前半が検証委員会からの報告となり、同委員会委員の6名(山梨俊夫[座長]、上山信一[副座長]、岩渕潤子、太下義之、金井直、曽我部真裕)から、「表現の不自由展・その後」の開催意図や経緯などともに、どのような作品が展示されていたかがあらためて説明された。
このなかで金井委員は、同展で示された「不自由」という言葉には、「様々な位相・視点があることは留意しなければならない」としながら、抗議の主たる対象となった作品のひとつ、大浦信行の映像作品《遠近を抱えて PartII》全編を会場で上映。大浦の「内なる天皇を見つめるのが一連の作品のテーマ。それを従軍看護婦の女性に託している」「天皇を冒涜する意図はまったくない」としたコメントを紹介した。
大幅に予定を押してスタートした後半では、あいちトリエンナーレ2019の参加作家から、Chim↑Pom卯城竜太(*)、大橋藍(*)、加藤翼、小泉明郎(*)、白川昌生(*)、高嶺格、毒山凡太朗らが一般参加者に向かってそれぞれ自身の作品を解説するとともに、今後についてコメント(*は「表現の不自由展・その後」参加作家)。
「表現の不自由展・その後」で《空気 #1》(2016)を出品した小泉は、「美術作品は様々な解釈を可能にするもの。人間の矛盾を抱えた存在を描くことがアーティストの仕事。不自由展の作品はそれぞれが矛盾に向き合った作品」としながら、「ぜひ(展示室の)空間に行って、体験してもらいたい。それなしに批評はない。美術館が意見を言える場所であることをアーティストは求めている」として、展示再開を強く求めた。
また卯城は「来場者の見る権利が奪われており、知る権利もない、だから考えることもできない。自由や権利を僕たちと一緒に取り戻していただきたい」と、鑑賞者がコミットすることの重要性を強調した。
なお、この日は会場に芸術監督・津田大介の姿もあったが、マイクを握っての発言の機会は設けられず、本件の主要関係者である「表現の不自由展・その後」実行委員会のメンバーも不参加となった。これについて一部参加者からは「一緒にディスカッションしたほうがよいのではないか」という声も上がったが、山梨委員長は同フォーラムがあくまで作家の話を聞き、一般参加者からの質問を受ける場であるとし、理解を求めた。
山梨委員長は、週明けにも中間報告書として展示再開に関するなんらかの方向性を示すとしており、これをもってあいちトリエンナーレ実行員委員会側が具体的なアクションを起こすことが予想される。
なお、10月には表現の自由に関する国際フォーラムが開催される予定。