世界各地から美術館・博物館関係者が会する「ICOM(国際博物館会議)京都大会」。その開催と、元離宮⼆条城の世界遺産登録25周年を記念する展覧会「時を超える:美の基準 Throughout Time: The Sence of Beauty」が、二条城・⼆の丸御殿台所と御清所(重要⽂化財)で開幕した。
本展では、森美術館館長・南條史生と彫刻家・名和晃平がアドバイザーとなり展覧会を構成。名和のほか、⻘⽊美歌、⼩林且典、白石由子、須⽥悦弘、チームラボ、⻄川勝⼈、ミヤケマイ、宮永愛⼦、向⼭喜章が参加している。
世界のアート関係者が集うこのタイミングで、「⽇本の美学とは何か、何が新しく、何が普遍的なのか、古いことと新しいことの価値は何か」を問いかける本展。なかでも注目したいのは、会場に入ってまず来場者を迎える名和の新作《Tornscape》(2019)だ。
タイトルにある《Tornscape》とは、鴨長明による随筆『方丈記』の英題のひとつ。本作は、日本最古の災害ルポルタージュともされる『方丈記』の無常観をテーマにしたもので、天候やランドスケープ、天災といった要素が、映像と音で表現されている。
プログラミングは白木良が、サウンドスケープは名和の泡を使った彫刻《Foam》でも共演した原摩利彦が担当しており、5つのシークエンスが独自のアルゴリズムによって生成。同じ場面はふたつと存在しない。絶えず蠢く画面は《Foam》などを思わせるもので、彫刻の領域を拡大し続ける名和の新たな展開とも言えるだろう。
本展では、このほかにも日本、あるいは二条城からインスピレーションを得た作品が並ぶ。例えばミヤケマイは、衣桁や屏風に着物などを掛け並べた様子を描く「誰が袖図」の様式から着想し、インスタレーション《誰が袖》(2017)を展示。平面に描かれた器と、そこから飛び出してきたような実物の器で構成し、⼆の丸御殿台所・御清所という場所性にリンクさせた。
また囲炉裏があった約五十畳敷きの部屋では、青木美歌が《煙庭》(2019)を展示。ガラスによって煙と火の粉の精霊を表現し、移ろう日の光を受けて表情を変え続ける。またその奥には、山の稜線をブロンズで模した小林且典の《山の標本》(2019)が設置されており、繊細で儚げな《煙庭》と、小さいながらも存在感を示す《山の標本》の対比が場所にコントラストを生み出している。
さらには京都出⾝の画家・伊藤若冲による代表作《鶏図押絵貼屏⾵》(1797)の⾼精細複製(レプリカ)や、京友禅と⽇本画の⼯房である豊和堂の⽇本画絵師たち(RINne Associe)がつくりあげた伊藤若冲《鶏図押絵貼屏⾵》と初⾳ミクが融合した⾁筆絵画《初音ミク×伊藤若冲》(2017)といった作品も展示。様々な角度から現代における「日本の美」とは何かを問いかけるものとなっている。