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いま、美術館のコレクションはどうあるべきか? 西洋美術館で「世界とつながるコレクション情報」が開催

第66回全国博物館大会「博物館からつながる」の分科会「世界とつながるコレクション情報」が11月29日、国立西洋美術館講堂で開催された。そこで語られた、日本の美術館が抱えるコレクション情報公開の現実とは?

国立西洋美術館

 いま、美術館のコレクションにスポットライトが当たっている。メトロポリタン美術館やシカゴ美術館など、海外の巨大美術館が自館のコレクションをパブリックドメイン(保護期間満了などによる公有化)として公開しはじめており、日本では11月に愛知県美術館が同様の試みをスタートさせた。また、Googleのアート・プラットフォーム「Google Arts & Culture」では国内外多数の美術館がコレクションを公開し、アクセシビリティを高めている。

メトロポリタン美術館のウェブサイトより

 そんななか、美術館のコレクションの情報公開に関する事例報告とそのあるべき姿をテーマとした、第66回全国博物館大会の分科会「世界とつながるコレクション情報」が11月29日に国立西洋美術館講堂で開催された。司会は馬渕明子(国立西洋美術館館長)、登壇者は川口雅子(国立西洋美術館情報資料室長)、山梨俊夫(国立国際美術館長)、植松由佳(国立国際美術館情報資料室長)、田所夏子(⽯橋財団ブリヂストン美術館学芸員)。

 今年11月、独立行政法人国立美術館が所蔵作品検索システムを拡充したことは記憶に新しい。この拡充では各作品の来歴が日英で追加され、研究者や一般ユーザーはより多くの情報にアクセスできるようになった。しかし馬渕は「国際的な(コレクション情報公開の)水準は非常に精緻です。それに追いつくためには人材、経済的な裏付けが必要となる」と語る。

独立行政法人国立美術館の所蔵作品検索システム(画面は白髪一雄《無題》の情報)

 今回の拡充が寄付金によって実現したことに触れ、次のように現実的なハードルの高さにも言及した。「理想だけあっても難しい。日本全国では来歴情報への関心は低く、情報の積み重ねもありません。この積み重ねがないと国際的になっていかない。予算確保も課題です。国や自治体に頼れないのであれば別の受け皿=寄付が必要となっていきます」。

 いっぽう川口は、日本の美術館と海外の美術館における、公開情報量の格差について指摘する。アムステルダム国立博物館所蔵のレンブラント《夜警》メトロポリタン美術館所蔵の尾形光琳《八橋図屏風》などでは、多くの記録が編纂され、それが情報として提供されているのに対し、東京国立近代美術館所蔵の横山大観《生々流転》には購入先などの記載はない。

アムステルダム国立博物館のウェブサイトより
メトロポリタン美術館のウェブサイトより
国立美術館所蔵作品検索システムウェブサイトより

 川口は、欧米の美術館が来歴を重視する背景に、ナチス略奪品の返還などを定めた1998年制定の「ワシントン原則」があると指摘。これが制定されたことで、欧米の美術館は来歴調査を重要視するようになったと語る。「美術館には来歴の空白を埋める努力が求められます。システム上ではなく、理念上、世界のコミュニティの仲間入りをするには、積極的にコレクション情報の公開に取り組むべきです」。

 コレクション情報について、近現代美術には特有の課題があることも指摘された。

 植松は「日本の近現代美術は来歴情報が外部に出されていないものが多く、持っている情報をどこまで出すべきなのかについては議論があります」と説明。「海外でも現代美術作品の歴史情報はまだあまり公開されていません。今後の美術史で語られる現代美術の情報をどのように蓄積し、公開していくのかを考えなくてはいけません」。

 また田所も「来歴について旧蔵者が個人の場合、様々な事情で情報を得にくい。作家によってはカタログ・レゾネのような文献がなかったり、またあっても情報が間違っているということもあります」と話す。

 美術館のコレクション情報は、一般ユーザーの各美術館に対するアクセシビリティを高め、ひいては実際の来館へと結びつけることができる重要な要素だ。今後、国は2019年1月より幅広い分野の情報を横断的に検索可能にする「ジャパンサーチ」を試験的にスタートさせる。こうした時代背景を踏まえ、各美術館にもより多くの情報公開と、ユーザーフレンドリーな構造構築が求めらるのは必然的な流れと言えるだろう。

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