およそ1260万人の人口を抱えるナイジェリアのラゴスは、西アフリカ最大の商業都市だ。アートギャラリーがぽつぽつと点在し、国際的な写真のフェスティバルが毎年行われるなど、アート発信地としての可能性を秘めたこの街で、2017年末に第1回ラゴス・ビエンナーレが開催された。
「Living On The Edge(縁に生きて)」のタイトルを携え、イギリス植民地時代に築かれた鉄道官舎の敷地で、アフリカ出身者を主とした41組の表現者の作品を発表。
存在感が強かった、ラゴス出身のアヨ・アキンワンデのインスタレーション《聾vs唖》は、ナイジェリア政府の終わることのない汚職撲滅キャンペーンを12体の木製の人物像で揶揄した。
また、ロンドンを拠点に活動するアンゴラ人アーティストのジャヌアリオ・ジャノは、自らのパフォーマンスのビデオ作品と手書きのグラフィックアートを合わせた《ムセケ》を発表した。パフォーマンスは、キャッサバ粉づくりにまつわる仕草を通じて自らと祖先のつながりを考察したものだ。
「アフリカ出身のアーティストは、ますます各地のビエンナーレに招聘されています。しかし、逆に他の地域の芸術作品をアフリカで展示することは、様々な困難が伴うため非常に稀です。ビエンナーレを通じて、ラゴスの国際都市としての姿を映し出したかったのです」と本展アートディレクター兼キュレーターのフォラクンレ・オシュンは語る。
アフリカ現代美術の可能性について問えば、「アフリカや西欧のアートといった分類分けに興味がありません。確かにアフリカン・アートというジャンルは存在します。しかし、そのために世界のアートがアートとして認識されるなか、アフリカのアートは未だにアフリカン・アートに留められてしまうのです。既に人類を隔てるものが多々存在するなか、アートはそうあるべきではない」と力強い。
政治経済において世界は多極化の時代に入ったと言われる。アート市場も然りで、かつて第三世界の辺境と呼ばれてきた街々がアート発信地として注目されるようになってきた。ラゴス・ビエンナーレが世界のアート地図にこの街をしっかりと位置付けられるかどうか、今後の発展を追いかけたい。