同フェアは、ほかの商業的なアートフェアとは一線を画す存在だと言える。戸塚によれば、一般的なアートフェアでは高額な出展料が求められ、アートフェア自体が利益を追求するビジネスとしての側面が強い。しかし、同フェアは企業としての社会的な姿勢を示す活動の一環として開催されているという。
その意図について、戸塚は次のように説明している。「このフェアは、より多くの人がアートに触れる機会をつくることを目的としている。入場料も無料のため、たまたま買い物や食事に訪れた人々が、偶然アートに触れることもあるだろう。アーティストには無料で出展の機会を提供し、このフェアでひとりでも多くのファンをつくってもらえればと思っている。そんな出会いが私たちの未来をより豊かにすると信じている」。
参加作家の年齢は幅広く、展示作品も従来の美術史で評価されるような作品だけではなく、グラフィックデザインや幅広いジャンルの作品を紹介している。戸塚はこう続ける。「一般的に、アートは美術館に収蔵されることで評価が確立し、美術史に残ることが最終的な目標とされている。しかし、アートにはもっと多様なかたちがあり、そうした既存の枠組みに収まらないものも価値があると考えている。歴史に残っていないだけで、アートと呼ばれない作品が多く存在している。そのような作品も拾い上げ、紹介することがフェアの意義のひとつだ」。
同フェアはアートコレクターだけではなく、アートに初めて触れる人々を主要な顧客としている。ここで人生初のアートを購入することにより、生活に新しい体験や視点が生まれることも期待できる。「例えば、たまたま立ち寄った人がドキドキしながら作品を買い、家に飾ってみることで世界が少し変わるような体験をしてもらいたい。それが次のステップ、本格的なアートへの入り口になるだろう。最初のハードルをここでクリアしてほしいというのが、このフェアの意図だ」(戸塚)。
それを実現するために、コンシェルジュと呼ばれるスタッフが会場内に常駐しており、来場者に対して作品の選び方や保存方法、飾り方などを丁寧にアドバイスする。また、来場者は会場でアーティストと直接対話することもできる。これらの取り組みにより来場者の不安を払拭し、自然にアートを楽しめることが期待されている。
今後の展開について、戸塚は「まず継続が最優先の目標だ」とし、次のように話している。「LMAP自体は既に14年続いており、その長寿命はルミネがアートに対して積極的な姿勢を持っていることの証だ。しかし、アートフェアとしてはまだ3回目の開催であり、今後どのように発展させていくかについては模索中でもある。例えば、現在の会場の規模が適切なのか、より多くのアーティストに参加してもらうべきなのか、といった点については引き続き検討していく必要がある。ただし、この規模感やアクセスのしやすさを維持しながら、続けていくことの意義を強く感じている」。
国際的なアートフェアが数多く存在するなか、アートの初心者にとって気軽にアートに触れられるこのような機会は需要があるだろう。そのため、LUMINE ART FAIRのような取り組みは、今後も続けていくことに大きな意味があると言える。様々なキャリアのアーティストをサポートしながら、アートを通じて人々の生活を豊かにしようとするこのフェアの今後を注視していきたい。
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