“バーニー”の愛称で親しまれるアメリカの巨匠画家・バーナード・フュークス。その生誕90年にあたる今年、「生誕90年『事物の本質を見抜く眼』バーニー・フュークスの世界」が代官山ヒルサイドフォーラムにて開催される。会期は、2022年12月6日~11日。
バーナード・フュークスは、1932年アメリカ・イリノイ州生まれの画家。62年にニューヨーク芸術家協会よりアーティスト・オブ・ザ・イヤーを受賞し、75年には史上最年少の若さで全米イラストレーション協会が任命する栄誉の殿堂(Hall of Fame)入りを果たした。
2009年、76歳でアメリカにて永眠した際は、『ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』などの有力紙が大きく取り上げ、その死に哀悼を示した。日本でも、NHK「日曜美術館」(2014年)やテレビ東京「美の巨人たち」(2013年、2017年)にて、その偉業が紹介されてきた。
そんな彼の生誕90年にあたる今年開催される本展では、肖像画、子供の絵本、イタリアの情景、イラストレーション、スポーツアートなど、バーニーが描いたすべてのジャンルの原画約50点が展示される。
まずはそのイラストレーションに注目したい。大学卒業後ののちデトロイトの自動車メーカーの広告を手がけ、その後ニューヨークで『ニューヨーカー』『スポーツ・イラストレイテッド』など、著名な雑誌でイラストを担当。
アメリカ経済が黄金時代を迎え、イラストレーションが大型グラビア誌、広告、本の挿絵等に引っ張りだこだった1960〜70年には、バーニーはトップランナーとなった。これまでに、ソサエティ・オブ・イラストレーターズによる5つの金賞と5つの銀賞を含め、100個以上の賞を受賞している。
彼が描いた肖像画も必見だ。人物の本質を見事に映し出し、歴代アメリカ大統領のジョン・F・ケネディやレーガンをはじめ、マーティン・ルーサー・キングやエリザベス女王といった著名人、モハメド・アリ、ペレら一流スポーツ選手をも魅了してきた。
アスリートの内面とスポーツの醍醐味を伝えるスポーツアートでも高い評価を受け、1991年には全米スポーツアカデミーから「スポーツアーティストオブザイヤー」の称号を受けている。
また、その類い稀なデッサン力によって、子供向け絵本への挿絵でも活躍。ヘミングウェイ、ヘンリー・ジェイムズ、トーマス・マンといった巨匠たちの古典的名作を担当し、ストーリーの臨場感を余すところなく伝えてきた。
本展ではさらに、世界中のギャラリーで紹介されたファインアートも展示される。題材となったのは、娘がイタリア人と結婚して以来毎年夏に訪れるようになった、イタリアの景色だ。バーニーが描く石畳、細い路地、中世の建築物からは、光と影を感じられるだろう。
全米屈指の巨匠画家・バーニー。その高い写実性と、アメリカ黄金時代の華やかな時代を映す華麗な色彩、光よりも影に重きを置く表現を原画で堪能できる本展に、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。