ふたつの家族の映像から「家族とは何か」を考える。第24回写真「1_WALL」グランプリ受賞者・白井茜の個展が開催へ

自身の家族と恩師の家族を撮影した映像作品《繋》で第24回写真「1_WALL」グランプリを受賞した白井茜。その個展「とどまって、聞いている」が銀座のガーディアン・ガーデンで開催される。会期は10月25日〜11月26日。

白井茜《繋》のスチールより

 第24回写真「1_WALL」でグランプリを受賞した白井茜の個展「とどまって、聞いている」が、10月25日〜11月26日に銀座のガーディアン・ガーデンで開催される。

 白井は1998年滋賀県生まれ。2021年に京都芸術大学写真・映像コースを卒業し、同大学卒業制作展の学長賞も受賞している。

白井茜

 第24回写真「1_WALL」で受賞した映像作品《繋》は、「家族とは何か」という幼少期からの疑問を起点に、自身の家族である白井家と高校時代の恩師の家族である多胡家のふたつの家族を撮影したもの。白井家と多胡家の映像をふたつ並べたモニターで同時再生し、左右に設置したスピーカーからそれぞれの音声を出力することでひとつの作品として構成した。

 審査員の小原真史(キュレーター)は本作について、「一見するとシンプルな展示だったのだが、既視感と未視感とが同居するような奇妙な感覚に襲われた」としつつ、ふたつの家族を親密さと疎遠さがないまぜになったような適度な距離感でとらえることで、「そこに映されていない別の家族へとつながる水脈を作り上げているように見える」「多くの観者は、白井の映像のなかに自分がこれまで通り過ぎてきた様々な家族の姿を幻視するのではないだろうか」と評価している。

白井茜《繋》のスチールより
白井茜《繋》のスチールより

 今回の個展では、グランプリ受賞後、少しずつ家族の状況が移り変わるさまを撮影し、再構成した映像作品をさらに大きなふたつのスクリーンで同時に上映する。白井の祖母との食事風景や、庭の花を手入れする様子、多胡家が墓参りに向かう後ろ姿、多胡家に友人が来て会話をする様子、ベッドに横たわる姿など、白井が約2年間にわたって撮影し続けてきたふたつの家族の映像を通し、家族のなかに心の支えである安心感と束縛される不自由感が同時に存在している様子を表現する。

白井茜《繋》のスチールより
白井茜《繋》のスチールより

 本展について白井は次のような言葉を寄せている。

2020年の夏から、多胡家と白井家二つの家族を撮り始めた。きっかけは「家族とは何か」という一つの問いだったが、撮影を進めていくうち、安易に答えなど出せないことが分かった。日常の中に小さな喜びを見つける、彼女たちの豊かな視点に驚かされる一方で、日々変化していく身体の様子や、互いを家庭に縛りつける一面が、生々しく映し出されていた。そこには思い描いてきた生優しい家族像はなく、私はただカメラの前で立ち尽くすことしかできなかった。
撮影を始めてから2年ほどが経ち、これまで撮った素材を見ているうちに、私は自分の家族との出来事を思い出していた。私たちが互いに傷つけ合ったことや、肌を触れ合ったこと、心地よさを感じたことが、確かな実感として、少しずつ思い起こされた。そして家族を繋いでいるものの輪郭が、薄らと描き出されていくように感じた。
「家族とは何か」ということについて、今の私が語るのは難しい。ただ今は、カメラを通してこの場所にとどまり、二つの家族の語りを聞き続けようと思う。

 なお会期中の11月11日には、小原真史をゲストに迎え、トークイベントを開催する。グランプリ受賞作品をアップデートした展示で、「家族とは何か」について考えてみてはいかがだろうか。

白井茜《繋》のスチールより
白井茜《繋》のスチールより

編集部

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