2013年よりアーツ千代田 3331を会場に開催されてきたオルタナティブなアートフェア、「3331 ART FAIR」。その11回目が10月29日と30日(プレビューは28日)の会期で開催される。
現代美術への新たな入口や関係性を築くことを目指してスタートした同フェア。「芸術性と市場性」を問うオルタナティブなアートフェアの構築にチャレンジし、表現活動や作品に宿る芸術的価値を社会的・経済的価値として評価することを試みている。また、「作品購入=賞の授与」とするコレクター・プライズや、個展開催をバックアップするレコメンドアーティストなど、アーティストをサポートする独自のシステムも設け、アートマーケットのさらなる拡充や多様性に向けた取り組みを続けている。
新たな社会の構築が急務となり、文化・芸術が果たす役割が一層重要になった状況のなか、同フェアはアートフェアを「見本市」「作品の売買」にとどめず、コミュニケーションやインスピレーションの場としてとらえる。ホワイトキューブから体育館、屋上まで、空間の特徴を活かしたプレゼンテーションを展開し、同時代を生きるアーティストが作品を通して投げかける多様なビジョンを提示する。
館内では、美術界の新たな展開を誘発するような多彩なギャラリーが各地から出展。独自の視点・運営ポリシーのもと活動を続けてきたアートギャラリーのほか、オルタナティブスペースや美術大学、そして3331 Arts Chiyoda館内のギャラリー・団体が集結する。コマーシャルギャラリーに限らない個性豊かな出展者の形態が注目ポイントだ。
2階の体育館では、藪前知子(東京都美術館 学芸員)や鷲田めるろ(十和田市現代美術館 館長)をはじめとする全国の美術館学芸員や次世代の美術界を牽引するキーパーソン、3331館内ギャラリーなど18名(団体)のキュレーター陣が選出した気鋭のアーティストを紹介。アートギャラリーで活躍する作家からギャラリーに所属しない作家、オルタナティブな活動を行う作家など、領域を超えるスタイルで制作・発表を続ける気鋭のアーティストによる多様な表現を堪能してほしい。
また、館内1階の3331 Galleryでは特別企画展として昨年の同フェアで発表し、のちにオーストリアのメディアアートの祭典「アルス・エレクトロニカ」で入賞した藤幡正樹のNFTプロジェクト「Brave New Commons」をさらに発展させた新しいプロジェクト「My First Digital Data」を開催。 藤幡正樹をはじめ、伊藤ガビン、エキソニモ、小池一子、佐藤卓、辛酸なめ子、高山明、都築響一など様々な領域のアーティスト約30名が、自分が撮った初めてのデジタルデータを発掘して出品する。初めてデジタルに遭遇したときの驚きや動揺、パーソナルな瞬間を切り取ったデジタル画像をNFT化し、日本円に代わって仮想通貨「イーサ(ETH)」で販売する試みを実施する。
そして2階206では前回に続いて、若手工芸作家を社会で応援する試みFPP(ファースト・パトロネージュ・プログラム)とのパートナーシップによる器やオブジェなど工芸作品の展示販売も開催。領域を超えて次世代の作家を紹介するとともに、新たなアート市場にもハイライトを当てる。
なお、会場となるアーツ千代田 3331は2023年3月をもって千代田区との契約満了となり、改修工事を行うことが発表されている。今後の方針や計画はまだ明らかにされていないが、改修工事に入る前にぜひ足を運び、同フェアの熱気を目撃してほしい。