東京・神楽坂の√K Contemporaryをはじめとした都内3会場で、堀江栞の個展「声よりも近い位置」が開催される。会期は√K Contemporaryが4月3日〜5月15日、Space√Kが4月3日〜4月17日、加島美術が5月29日〜6月12日。
堀江栞は1992年フランス生まれ。2014年多摩美術大学美術学部絵画学科日本画専攻卒業。同年に加島美術で初の個展を開催し、「アートフェア東京2015」の加島美術ブースにソロで出展。第6回東山魁夷記念日経日本画大賞展入選。第26回五島記念文化賞受賞により、2016年の1年間パリに滞在。第六回世田谷区芸術アワード“飛翔”を受賞し、今年3月に受賞記念展を世田谷美術館区民ギャラリーで開催した。
今回開催される個展は、第26回五島記念文化賞美術新人賞受賞によって行った堀江の海外研修の成果発表展として、東急財団の助成のもとに都内3会場で開催されるもので、√KContemporaryと同ギャラリー地下のSpace√Kの2会場の展示を皮切りにスタート。堀江が海外研修を経て初めて描き始めた人物画を中心とするここ数年の近作や、パリ滞在中の写真、担当した本の挿画・装画の原画も展示する。
堀江は、2014年加島美術での初個展では、動物を中心に対象物を包み込むような目線で描かれた作品を多く発表。さらにパリでの滞在を経て、そのモチーフは人へとひろがりを見せた。細部までの描きこみが生む独特のマチエールは岩絵具によってつくりだされており、見る者の深い洞察を喚起する。
描かれた人物の「眼差し」が何を主張し訴えているのか。堀江は「『痛みを負った哀しさや辛さを抱えている者』たちの声。周囲に、社会に踏みつぶされそうな声。そんな声を聴き取るために、『人』を描いてみたいとはじめて思いました」と語っている。堀江にしか感受することのできない価値観を新作でどのように見せるのか期待が集まる。
同展の開催にあたって、次のようにコメントを寄せている。「制作にあたって心がけているのは、モチーフを目の前に置き、距離を縮め、観察を重ねて描いていくことです。対象は、いつもすぐそこに、でも見えないところにあります。長い時間にわたって対話を続けることで彼らに近づき、静かに発せられる声を、なんとか聴き取りたい。展覧会の総タイトルを『声よりも近い位置』としたのは、そのような願いをこめてのことです」。