2019.11.22

ミュージアムからウォールまで。新生「渋谷パルコ」でチェックしたいアートスポット(前編)

11月22日に開館を迎えた渋谷パルコ(PARCO)。1969年の池袋パルコ開業から50年の節目に生まれ変わったここにはアートの要素が詰まっており、「アートの館」とも言えるだろう。その注目ポイントを、前後編の2回に分けてお届けする。

 

「PARCO MUSEUM TOKYO」の展示風景 撮影=岩澤高雄
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 1973年にオープンし、文化の発信拠点として大きな存在感を放ってきた渋谷パルコ(PARCO)。2016年から進められてきた建て替え工事が完了し、この11月22日にリニューアル・オープンを迎えた。

 69年の池袋パルコ開業から50年という節目の年にリニューアルした渋谷パルコが掲げるビルコンセプトは、「世界へ発信する唯一無二の“次世代型商業施設”」。注目したいのは、その構成要素だ。193ものショップが軒を連ねる渋谷パルコは、「FASHION」「ART&CULTURE」「ENTERTAINMENT」「FOOD」「TECHNOLOGY」の5つの要素によって構成されている。ここでは、このうち「ART&CULTURE」に注目し、そのハイライトを前後編で紹介。前編では、パルコ直営のコンテンツをピックアップする。

渋谷パルコ

渋谷パルコのアートを代表する。「PARCO MUSEUM TOKYO」

 まず外せないのが、渋谷パルコのアートを担う代表的な施設「PARCO MUSEUM TOKYO」だ。

 旧渋谷パルコの3階にあった「パルコ ミュージアム」を前身とするPARCO MUSEUM TOKYOは、アートだけでなく、デザインやファッションなどをメインに、独自の企画を展開。ロゴは、ロンドンを拠点に世界で活動するデザイン集団「TOMATO」がデザインし、内装は山本大介と天水義敬が担当した。

PARCO MUSEUM TOKYO 撮影=岩澤高雄

 こけら落としとなるのは、開幕前から注目を集めてきた「AKIRA ART OF WALL Katsuhiro Otomo × Kosuke Kawamura AKIRA ART EXHIBITION」(〜12月8日)だ。

 同展では、渋谷パルコの建て替え工事の際に仮囲いを美術演出した「ART WALL」を再現した。このART WALLは、大友克洋の代表作『AKIRA』の世界観を、渋谷PARCO建て替えに伴う環境演出として、コラージュアーティスト・河村康輔と共同で再構築し、展開したもの。多くの人々の目に留まってきたウォールが、展示室で強い存在感を放つ。

展示風景より、ART WALL 撮影=岩澤高雄

 これに加え、展示室では『AKIRA』の貴重な原画や、作中に出てくる「王座」の立体作品なども展示。ミュージアムショップでは、大友の私物も多数見ることができる。

大友克洋の私物 撮影=岩澤高雄
大友克洋の私物 撮影=岩澤高雄

もうひとつのアートスペース「GALLERY X」

 PARCO MUSEUM TOKYOと対をなすアートスペースが、地下1階にある「GALLERY X」。かつてスペイン坂にあったこのギャラリーでは、アニメやゲーム、音楽まで幅広いジャンルをボーダレスに展開していくという。

 こけら落としはPARCO MUSEUM TOKYOと同じく「AKIRA ART OF WALL Katsuhiro Otomo × Kosuke Kawamura AKIRA ART EXHIBITION」。

 『AKIRA』作中で巨大化した鉄雄をモチーフにした立体作品と映像のプロジェクションで、ネオトーキョーのカオスを強烈に伝える。

GALLERY Xの展示風景 撮影=岩澤高雄

パルコ文化を発信する「PARCO劇場」

 73年に「西武劇場」として開館して以来、2016年までの43年間で約1200もの作品を上演してきたPARCO劇場も、渋谷パルコのランドマークだ。

PARCO劇場 撮影=岩澤高雄

 旧来の458席から636席へと大幅に席数を増やしたPARCO劇場。ここでは、年間公演のすべてを自主プロデュースし、21年5月上旬までで14作品を上演する。

 こけら落としは『志の輔落語〜PARCO劇場 こけら落とし』と、朗読劇の金字塔『ラヴ・レターズ〜こけら落としスペシャル〜』の2本。3月13日からは、オープニング・シリーズとしてピーター・シェーファー作による歴史劇『ピサロ』を、85年以来、35年ぶりに上演する。

実験的な作品にも挑戦。ミニシアター「WHITE CINE QUINTO(ホワイト シネクイント)」

 パルコが運営する映画館「シネクイント」が、新形態として誕生した。ミニシアター「WHITE CINE QUINTO(ホワイト シネクイント)」は、座席数108席の親密な空間。「WHITE」という名前には、「新たな発見」や「無限に広がる無垢な場所」という意味が込められている。

WHITE CINE QUINTO。奥には旧渋谷パルコのネオンが見える 撮影=岩澤高雄

 オープニング作品となるのは、草間彌生の生涯を追ったドキュメンタリー作品『草間彌生∞INFINITY』。制作期間14年という膨大な時間をかけて制作された本作は、WHITE CINE QUINTOの幕開けを飾るにふさわしい作品だ(監督インタビューはこちら)。

 なおWHITE CINE QUINTOでは、映画のみならず、ファッションブランドのコレクションショーなど、映画以外のジャンルの上映も積極的に行っていくという。

誰でも見れるアートウィンドウ

 渋谷パルコの1階を貫き、ペンギン通りとオルガン坂をつなぐ「ナカシブ通り」。ここの2階部分にお目見えしたのが、幅約17メートル、高さ約3メートルという巨大なアートウィンドウだ。

 24時間通行可能なこの場所。オープンから半年間は、田名網敬一によるインスタレーションが展開され、田名網ワールドのキャラクターたちが目を楽しませてくれる。

「ナカシブ通り」から見た田名網敬一のインスタレーション

 これだけを見ても、渋谷パルコがいかにアートやカルチャーの発信に力を入れているかがわかるだろう。さらに後編では、各テナントのなかからアートの要素を強く打ち出したコンテンツをご紹介する。