マーケットの減速と韓国のアートハブとしての展望
いっぽうで今年のフェアでは、アートマーケットの減速を指摘する声も聞かれた。これについてパトリック・リーは、「韓国やアジアだけでなく、すべてのマーケットは循環するものだ。これは世界的な傾向であり、我々のマーケットもその流れに沿っている」と語っている。
タデウス・ロパックは、「結論を出すにはまだ早いが、初日の売上は昨年と比べてやや鈍化している」と述べつつも、「ソウルのアートシーンには素晴らしいダイナミズムがあり、フリーズはここでの存在感と影響力を確立している」として、今後の展開に楽観的な見解を示している。
同ギャラリーは初日、ソウル市内で新作個展を開催中のゲオルク・バゼリッツの絵画(100万ユーロ)や、今月プログラムに加わった韓国のアーティスト、イ・カンソの作品(18万ドル)、そして10月のフリーズ・ロンドンに合わせてロンドンのギャラリーでの初個展を控えるヒミン・チョンの絵画(3万2000ドル)などの作品を主に韓国のコレクターに販売したという。
こうした状況下でも、TARO NASUのディレクターである細井眞子は、「中間層のコレクターが安定しているので、確実に狙える市場だ」と語った。中規模ギャラリーにとっては、1000万円(約7万ドル)以上の作品の販売が鈍化しているいっぽうで、小型の作品や1万5000ドル〜3万ドルの価格帯の作品には依然として高い需要があるという。同ギャラリーは初日、田島美加、榎本耕一、ジョナサン・モンク、ブノワ・ピエロンらの約10点の作品を1点あたり5万ドル以下の価格で販売した。
多くの出展ギャラリーや来場者は、ソウルが非常に豊かなアートエコシステムを持つ都市であると指摘している。韓国政府による文化芸術への積極的な支援や、K-POPをはじめとする韓国文化が国際的に人気を集めていることが、ソウルをアート関係者にとって魅力的な訪問先にしている。
ソウルがアートハブとしての地位を強固にしている理由について、パトリック・リーは次のように語っている。「ソウルには非常に強いアーティスティックな実践があり、ギャラリーにとっても良い場所だ。コレクター層も素晴らしく、アートや文化を大切にしている。この街の文化的な織り成しは素晴らしいし、ビジネスを行ううえでも、ロジスティクス面で利便性が高い場所だ。食べ物や雰囲気の良さもあって、多くの要因が組み合わさりソウルの魅力を高めている」。
フリーズ・ソウルは、韓国とアジアのアートシーンをさらに活性化させる重要なプラットフォームとして成長している。そのエネルギーと可能性は、今後も続くだろう。今回のフェアを通じて、ソウルはアートの国際都市としての存在感を一層強め、訪れる多くの人々に新たな発見と刺激を提供し続けるに違いない。