経済産業省が日本のアートシーンの活性化に向けて設置した、有識者からなる「アートと経済社会について考える研究会」。その研究成果が報告書として取りまとめられた。経済産業省によるアートについての報告書の作成は初となる。
研究会の座長は大林組・会長の大林剛郎が務め、アーティスト、美術館、ギャラリー、アートマーケット、メディア等各分野より33名の委員が参加している。
報告書はアート界を、おもに「アートと企業・産業」「アートと地域・公共」「アートと流通・消費」「アートとテクノロジー」の4つの視点に分けて分析している。
まず「アートと企業・産業」では、アーティストの思考を学び創造性を高める取り組みや、創作や鑑賞等を通じた人材育成、組織活性化などを踏まえ、企業の教育や産業の育成、アートの継続的な需要創出のための課題等についてまとめている。
アーティストの思考を学び創造性を高める取り組みや、オフィスでアートを活用する事例が増えていることを評価しつつ、いっぽうで周知がまだ不十分だったり、助言や仲介を行う事業者が不足しているため一過性になりがちであることなどを指摘。また、過去に購入したアートが負の遺産となり、新たなアートへの投資に取り組みにくいといった課題も言及されている。
「アートと地域・公共」では、地域活性化や観光需要獲得などの効果と、地域におけるアート導入に向けた工夫や留意点、活用可能な制度等についてまとめている。
地域の活性化においてアートが貢献している事例の多さを評価しているが、課題として地域住民の理解、アートの選定や保存継承といったことに関する知識やノウハウ、地域におけるアートについてのヒト・モノ・カネ、アーティストの発表制作の場といった、不足している項目が挙げられた。
「アートと流通・消費」は、より多くの人がアートに親しむために必要な取組や、近年登場している新たなアート・スタートアップの革新的なサービスなどを踏まえ、アーティストの活躍機会やマーケットを拡大していくための環境整備について整理。社会が創造的であるために、つくり手のみならず、創造活動に携わる人々を増やすことが重要だと提案している。
最後の「アートとテクノロジー」では、 アートの可能性を広げるテクノロジーの重要性や、テクノロジーの社会実装・イノベーションを促進するためのアートの重要性についてまとめられた。
各項目、整理はされているがまだ具体的な方策の提示にはいたっていないものの、経済産業省からアートを前面に出してその経済効果を検討する報告がデたことは、大きな一歩と言えるだろう。