収蔵品被災の責任はどこに? かわさき市民オンブズマンが川崎市市民ミュージアムについて報告会

2019年10月の台風19号によって23万点もの収蔵品が水没・被災した川崎市市民ミュージアム。この未曾有の被災について、かわさき市民オンブズマンが報告会を開催した。

川崎市市民ミュージアム外観(2021年撮影)

 2019年10月、関東地方を縦断した台風19号により、9つの収蔵庫への浸水と収蔵品の被害が確認された川崎市市民ミュージアム。約23万点もの収蔵品が被災するという未曾有の事態について、かわさき市民オンブズマンが「収蔵品を守ることは不可能だったのか」と題した報告会を実施した。

 川崎市市民ミュージアムは1988年に開館。写真やマンガ、グラフィック、映画、映像などの「複製技術芸術」の歴史に関わる総合的なコレクションを有する美術館だが、約26万点の収蔵品のうち約23万点が台風による水害によって被災した。

被害を受けたマンガ雑誌等を収蔵する第6収蔵庫の様子 提供=川崎市

 同館の場所は、ハザードマップで多摩川が氾濫した際に5〜10メートルの想定浸水深があらかじめ予想されていた。しかしながら同館では収蔵庫を地下1階に設置されており、台風19号発生時には地下部分5898㎡の広さに推定16万㎥もの水が侵入。多くの収蔵品が被災し、すべての被災作品の救出が完了したのは2020年6月19日だった。

 今回の収蔵品被災について、市民オンブズマンは20年6月、川崎市を相手取り、損害賠償請求を行うよう住民監査請求を実施したものの、却下。これを受けて同年9月に住民訴訟を起こした。オンブズマン側は、低湿地にあった搬入口への防水壁設置などの予防措置が取られず、作品の垂直避難(上階への避難)など適切な措置が行われなかったと主張。また、同館が17年7月より指定管理者制度(アクティオ・東急コミュニティ共同事業体)になったたため経験のある学芸員が流出し、結果的に適切な作品の避難措置や迅速な修復活動が行われなかったとしている。

かわさき市民オンブズマンの報告会の様子。左は川崎市市民ミュージアム元副館長の濱崎好治

 いっぽうの川崎市は、今回の水害は多摩川の氾濫ではなく内水氾濫であり、短時間に20万点以上の収蔵品を移動させることは困難と主張。また地下収蔵庫は他の施設でも採用されており、例外的なものではないとしている。

 オンブズマン側は、今回の判決によっては行政の文化財保管の責任が軽んじられてしまうと訴える。判決は2月28日、横浜地裁で言い渡される。

 なお、川崎市市民ミュージアムの施設そのものについてはすでに取り壊しが決定。市有地である「生田緑地ばら苑隣接区域」が開設候補地となっており、23年度末までに新たなミュージアムに関する基本計画を、24年秋頃までに管理運営計画を策定し、30年以降の完成を予定している。

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