東京の空に浮かんだ《まさゆめ》で話題を呼んだ、現代アートチーム・目[mé]の現在地に迫る
アーティストの荒神明香、ディレクターの南川憲二、インストーラーの増井宏文の3人を中心メンバーとする現代アートチーム・目[mé]。今秋、「さいたま国際芸術祭2023」のディレクターを務めたかれらは、2012年に結成され、14年の資生堂ギャラリーをホテルに仕立てたような展示が話題となり、同時に各地の芸術祭での発表が続いた。19年に千葉市美術館で開催された「非常にはっきりとわからない」では、ふたつのフロアにまったく同じ光景をつくり、大きな注目を集めることとなる。コロナ禍の21年には、東京オリンピック・パラリンピックの開かれる東京で、実在するひとりの顔を空に浮かべる《まさゆめ》を実現。多くの人が目撃し、メディアでも大きく取り上げられた。
結成から10年を超えた現在、プロジェクトの規模を大きくしながら、つねに新たな話題と驚きをもたらしてくれる目[mé]。いっぽうで、人が思わず誰かに話したくなるような仕掛けや、サイトスペシフィックな作品体験が重要な意味を持つ作風から、話題先行型ととらえられたり、その活動の「実像」が十分に伝わっていない現状もあるのではないか。本特集は、そんな目[mé]がいま何を考えていて、次の10年に向けてどんなステージに向かおうとしているのか、「さいたま国際芸術祭2023」をきっかけにして探っていく内容となっている。
目[mé]の活動や「さいたま国際芸術祭2023」についての美学者・伊藤亜紗との対談や「SCAPER」の秘密に迫る座談会、ほかにもチームクリエイションを重視する目[mé]の制作面について、これまで機会の少なかった増井へのインタビュー、チームのメンバーへの取材も実施し、掲載。目[mé]の掲げる「クリエイティビティの分配」というコンセプトは、多くのクリエイターにとっても参考となるだろう。目[mé]の結成までを描いた「伝記マンガ」も見どころのひとつとなっている。
また、東京オペラシティ アートギャラリーで個展を開催中(〜12月24日)の沖縄の写真家・石川真生のロングインタビューも掲載されるほか、障害のある当事者たちが作品を見て、批評するための対話の蓄積、そのための環境づくりについて考える木下知威の論考も取り上げる。