森美術館が、今年10月1日付でマーティン・ゲルマンをアジャンクト・キュレーターとして迎えたことを発表した。
ゲルマンはドイツ・ケルン在住のインディペンデント・キュレーター。ドイツ、ベルギーを中心に数々の展覧会でキュレーションを手がけており、また、かねてよりアジア圏のアーティストにも注目し、自身の展覧会企画で積極的に紹介してきた。現在、森美術館で開催中の「アナザーエナジー展」でも共同キュレーターを務め、ヨーロッパ拠点のアーティストのリサーチや出展作品の調整を担当し、展覧会の実現に大きく貢献したという。
アジャンクト・キュレーターとは非常勤のキュレーターのことを指しており、ゲルマンは23年以降の展覧会で企画を担当する。
コロナ禍の移動制限以降、リモート環境でリサーチなどを行うモデルとして海外の美術館でも導入の事例が増えるなか、同館は「国際性を持続する策、さらにはサステナビリティを考慮したキュレーションのモデルとして、今後の可能性に期待できると考えている」とし、「アジャンクト・キュレーターの起用により、未来を見据え、持続可能な美術館運営を目指す」という。
就任にあたりゲルマンは声明文で、「森美術館の一員として、アジャンクト・キュレーターを務めることになり、大変光栄に思います。いま、まさに時代が直面している社会的倫理や環境をめぐる課題は、共生、発展、そして共有の原理に基づく、グローバルで新しい視点を必要としています」とし、次のように語っている。
「そのような状況にあって、森美術館がミッションに掲げる『アート+ライフ』の実現に寄与することは急務であると考えています。また、世界を牽引する学際的な美術館のひとつである森美術館に、私がアジャンクト・キュレーターとして携わることが、これからの協働のかたちを探るうえで『国際性』についてあらためて考える一助となれば幸いです」。
また、同館館長の片岡真実はゲルマンの起用について次のような期待を寄せている。「コロナ以前より組織の国際化を検討していましたが、コロナ禍による移動制限とリモート業務の加速は、様々なローカルをつなぐ可能性を明らかにしてくれました。こうした人材を通して、日本やアジアのアーティストと他の地域との交流もますます盛んになることを願っています」。