昨年12月に開業し、話題を集めるアートホテル「SHIROIYA HOTEL(白井屋ホテル)」。この内部に、杉本博司と建築家・榊田倫之(*)による新素材研究所が設計した完全予約制の特別個室「真茶亭(まっちゃてい)」が完成した。
SHIROIYA HOTELは、江戸時代より約300年ものあいだ続きながら2008年に廃業した老舗「白井屋旅館」(1970年にホテルに転換)のヘリテージを活かし、開業したもの。藤本壮介が設計を担当し、当時の建築をリノベーションしたヘリテージタワーと、旧河川の地形を活かした「土手」を模したグリーンタワーの2棟で構成されている。
ローレンス・ウィナーによるロゴが象徴的な同ホテルの館内には、レアンドロ・エルリッヒの巨大なインスタレーションをはじめとする様々な現代アーティストの作品が展示。ジャスパー・モリソン、ミケーレ・デ・ルッキ、レアンドロ・エルリッヒ、藤本壮介がそれぞれひとつの客室の内装設計を一から手がけたスペシャルルームなどもあり、アートファンにとっても楽しめる要素が満載だ。
今回、そんなアートホテルのグリーンタワー1階に、新素材研究所が設計した特別個室「真茶亭」が誕生した。プライベートの会食や催事などに使用されるこの特別個室。奥には白井屋ホテルの前身である旧白井屋の最後の女将が愛用した緑色の壁の茶室「春月(しゅんげつ)」を移築した空間があり、「真茶亭」という名も茶室の壁の緑色に着想を得て、命名された。
ファサードは、硝子職人の手でつくられた100枚以上のガラスが積み重なっており、内部の空間は昼間と夜間で違う表情を見せる。積層ガラスの小口は抹茶色であり、内部の土壁とも呼応している。室内中央には無垢の杉材を使用したカウンターがあり、ボトルクーラーとして据えられた江戸時代の石製立ち手水からこぼれる水の波紋が広がっていく様を杢目によって表現したという。
また正面には杉本が揮毫した扁額が土壁に飾られている。この空間は茶室への待合として使われることを前提として設計されている。茶室では真の茶がふるまわれるという意を表すものとして篆刻された。ひとつの作品とも言える「真茶亭」で贅沢なひと時を過ごしてみたい。
*──榊田の榊の漢字は、木ネ申