金沢の「国立工芸館」が10月25日に開館へ。名誉館長には中田英寿が就任

東京国立近代美術館工芸館が金沢に移転し、通称「国立工芸館」として10月25日に開館。名誉館長には、中田英寿が就任することとなった。

国立工芸館 撮影=太田拓実

 東京・竹橋の東京国立近代美術館工芸館が金沢へ移転し、10月25日に開館することが決定した。通称は「国立工芸館」で、正式名称は東京国立近代美術館工芸館のままとなる。

 東近美工芸館は1977年に東京・北の丸公園に開館。コレクションには、陶磁、ガラス、漆工、木工・竹工、染織、金工、人形、デザインなど、全国各地・近現代のあらゆる工芸分野の秀作を網羅した約3800点があり、そのうち約1900点がこの金沢に移転する。

エントランスに設置された金子潤の《Untitled (13-09-04)》 撮影=太田拓実

 移転先となるのは、「兼六園周辺文化の森」。日本三大名園のひとつである兼六園を中心に、石川県立美術館、いしかわ赤レンガミュージアム(石川県立歴史博物館、 加賀本多博物館)、金沢城公園、金沢21世紀美術館、鈴木大拙館など、藩政期以降現代までの歴史的建造物・文化施設が集まるエリアだ。

 国立工芸館の建物は、明治期に建てられたふたつの旧陸軍の施設、旧陸軍第九師団司令部庁舎(1898年建築)と旧陸軍金沢偕行社(1909年建築)を移築するとともに、過去に撤去された部分や外観の色などを復元して活用。いずれの建築も、1997年に国登録有形文化財に登録されている。

国立工芸館

 館内は1階から2階にわたる全3室の展示スペースからなり、季節ごとに展示替えを実施。1階では、工芸の見どころをわかりやすく紹介するコーナーや、ミュージアムショップ、アートライブラリなどが入る。また2階には、金沢出身の重要無形文化財保持者(人間国宝)、漆芸家・松田権六(1896〜1986)の工房を移築・復元し、作家ゆかりの制作道具や関連資料、記録映像を展示する。

旧陸軍第九師団司令部庁舎(2F 階段ホール) 撮影=太田拓実
旧陸軍金沢偕行社(2F 多目的室) 撮影=太田拓実

 開館記念展となるのは、特別展「国立工芸館 石川移転開館記念展I 工の芸術―素材・わざ・風土(仮称)」(2020年10月25日〜2021年1月11日)。所蔵作品から、「素材」「わざ」「風土」をキーワードに、 日本の近代化のなかで各地方の工芸家たちがどのように「素材―自然」と向き合ってきたか、また時代と共に「自然のイメージ」をどのようにとらえ直してきたかを探り、つねに更新されていく日本の「風土」を紹介する。

 その後は、特別展「国立工芸館 石川移転開館記念展II うちにこんなのあったら展 気になるデザイン+工芸コレクション(仮称)」(2021年1月30日〜4月15日)、特別展「国立工芸館 石川移転開館記念展III 近代工芸と茶の湯―四季のしつらい―(仮称)」(2021年4月29日〜7月4日)を開催予定。

 なお、同館では名誉館長として元プロサッカー選手の中田英寿が就任。中田は2015年に株式会社 JAPAN CRAFT SAKECOMPANY」を設立し、日本の伝統文化や工芸の支援に取り組んできた。

中田英寿

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