イスラエルを代表する振付家インバル・ピントと、カンヌ国際映画祭カメラドール賞受賞で映像作家としても活躍する短編作家エトガル・ケレットが、森山未來と阿部海太郎と映像でコラボレーション。現在、その作品『OUTSIDE』が、彩の国さいたま芸術劇場の公式YouTubeチャンネルで公開されている。
本作の原作は、ケレットがロックダウン中に執筆した短編小説『外』。新型コロナウイルスによる外出自粛解除後の喪失感や浮遊感、不穏な空気感を凝縮させた「いま」を映し出すショートストーリーだ。
ピントは、国立ベツァレエル美術アカデミーでグラフィック・アートを学んだのち、バットシェバ・アンサンブル、バットシェバ舞踊団を経て、1992年に自らのカンパニーを結成。2000年には『WRAPPED』でニューヨーク・ダンス&パフォーマンス賞ベッシー賞を受賞した。07年には、彩の国さいたま芸術劇場とカンパニーの共同製作により『銀河鉄道の夜』をモチーフとした『Hydra ヒュドラ』を世界初演。16年にもカンパニー作品『DUST』を同劇場で上演した。そのほかミュージカル『100万回生きたねこ』(2013)や『WALLFLOWER』(2014)、村上春樹原作の『ねじまき鳥クロニクル』(2020)の演出・振付・美術を手がけるなど、オペラや演劇、CMの分野にも活躍の場を広げている。
同じくイスラエル拠点に活動するケレットは、ポーランドでホロコーストを体験した両親を持つ。義務兵役中に親友が自殺したことをきっかけに小説を書き始め、現在は世界40ヶ国以上で翻訳されている気鋭の作家だ。ショートショートをはじめ、グラフィックノベル、映画、テレビの脚本で知られ、日本においても『突然ノックの音が』(2015、新潮社)、『あの素晴らしき七年』(2016、新潮社)ほか多数の作品が刊行されている。
森山は『100万回生きたねこ』への出演がきっかけで、文化庁文化交流使としてイスラエルに1年間滞在。インバル・ピント&アヴシャロム・ポラック ダンスカンパニーを拠点にヨーロッパで活動し、その後も『WALLFLOWER』に参加したイスラエルに縁のあるアーティストだ。阿部もまた、『100万回生きたねこ』では作曲と音楽監督を担当、『WALLFLOWER』では作曲のほか生演奏で出演した。
『OUTSIDE』の撮影は、日本とイスラエル両国のスタッフによってオンラインで行われたという。本作を通じて、パンデミックによって立ち現れたオンラインという環境下での新しいクリエイションのかたちが模索される。今回の作品公開は、パンデミックが社会や個人に与える影響について、芸術的および社会的で新鮮な視点を世界のオーディエンスに向けて発信する試みだ。