不確かな未来への一歩を踏み出す「光をつかまえる」力。ヨコハマトリエンナーレ2020の参加アーティストが追加発表

今年7月に第7回の開催を迎える予定の「ヨコハマトリエンナーレ2020」が参加アーティストを追加発表。また、アーティスティック・ディレクターのラクス・メディア・コレクティヴや、企画統括の木村絵理子によるコメントも発表された。

「ヨコハマトリエンナーレ2020」ロゴマーク

 今年の7月17日より7回目の開催を迎える「ヨコハマトリエンナーレ2020」。主催の横浜トリエンナーレ組織委員会によれば、新型コロナウイルスの影響により各種イベントが自粛を余儀なくされる状況を見据えつつも、終息後速やかに開幕ができるよう準備を進めているという。

 こうした状況ながらも、4月時点での参加アーティストが発表され、国内外の計65組67名が名を連ねた。うち34組は、日本で初めて作品を発表するという。「独学」「発光」「友情」「ケア」「毒性」といった「ソース」から導き出されるキーワードに応答するアーティストが選定された。日本からは青野文昭、新井卓、飯川雄大、飯山由貴、岩井優、岩間朝子、金氏徹平、川久保ジョイ、佐藤雅晴、さとうりさ、新宅加奈子、竹村京、田村友一郎らが参加する。

佐藤雅晴 ガイコツ 2018 (c)Estate of Masaharu Sato Courtesy of KEN NAKAHASHI
さとうりさ 本日も、からっぽのわたし #1 2019 (c)Risa Sato Courtesy of ZOU-NO-HANA TERRACE Photo by 427FOTO

 アーティストの出身地は、約半数が日本を含むアジア大洋州、約4分の1が中東、中南米およびアフリカが占め、欧米が同じく約4分の1を占める。これは、先端的かつ活発な現代美術の活動の重心が、非欧米圏に移りつつあることを意識した結果だ。さらに、今回参加するアーティストの約半数が80年代以降の生まれとなっており、00年代以降の世界を見つめてきた若い世代のアーティストたちが存在感を発揮するのも特徴だ。

レボハング・ハンイェ ケ・サレ・テン(今もここにいる) (c)LEBOHANG KGANYE Courtesy of AFRONOVA GALLERY
イシャム・ベラダ Présage(予兆) 2007〜 (c)Hicham Berrada (c)ADAGP Hicham Berrada Courtesy the artist and kamel mennour Paris/London Photo by Hicham Berrada

 アーティスティック・ディレクターを務めるインド人3名によるアーティスト集団「ラクス・メディア・コレクティヴ」は、ヨコハマトリエンナーレ2020についてステートメントを発表。「今回のヨコハマトリエンナーレ2020は、私たちの多様な世界にある多様な流れを誠意をもって受け入れる態度を示します。その最初の瞬間から皆さんに、世界が液体でできている状況をお見せいたしましょう。確実とされる事態への思い込みを溶かし、ぼやけさせ、また周縁を中心として踊らせましょう。そこでは手つかずの自然はもはや文明に対立するものではなく、文化的倫理 にありがちな偏狭さは公然と無視されるのです」。

ラクス・メディア・コレクティヴ 写真=田中雄一郎 写真提供=横浜トリエンナーレ組織委員会

 また、新型コロナウイルスの流行を経験する現在の世界における、ヨコハマトリエンナーレ2020という展覧会について、企画統括の木村絵理子は以下のように言葉を寄せた。「目下、新型コロナウィルスの世界的流行によって顕在化したのは、その毒性以上に、情報への不信と過信、不確定な未来や他者への恐怖となっているようです。目の前の危機が過ぎ去った時、恐怖の記憶は澱のように人々や社会の其処此処に残っていくかもしれません。こうした世界の中で生き延びていくためには、人間社会のみならず生態系全体の多様性を認め、それぞれが自立して、光を放つように存在することが今まで以上に重要な意味を持ってくるでしょう。ヨコハマトリエンナーレ2020は、現代アートを通じて、私たちそれぞれが不確かな未来への一歩を踏み出す 『光をつかまえる』力について考える機会となることを目指します」。

 世界的なパンデミックの後にアートが果たす役割。それを探るうえでも、ヨコハマトリエンナーレ2020は重要な意味を持つ芸術祭となるだろう。

エヴァ・ファブレガス ポンピング 2019
ニック・ケイヴ 回転する森 2016 (c)Nick Cave, Courtesy of the artist and Jack Shainman Gallery Photo by James Prinz
ニルバー・ギュレシ 鞍馬(「知られざるスポーツ」より)(部分) 2009 (c)Nilbar Güreş Courtesy of Galerist

編集部

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