ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場の最新オペラ公演をライブ撮影し、映画館で上映する「METライブビューイング」。公演本編だけでなく、舞台裏の映像や歌手へのインタビューなども収録した内容で、世界各国の映画館で上映されている。
そのMETライブビューイングの最新作として、ウィリアム・ケントリッジの演出によるアルバン・ベルクのオペラ『ヴォツェック』が、2月28日~3月5日に東劇や新宿ピカデリーをはじめとする映画館で全国公開される。
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『ヴォツェック』は、ドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナーの未完の戯曲をもとに、オーストリアの作曲家、アルバン・ベルクが作曲と台本を手がけたオペラ作品。1925年に初演され、貧しい生活を強いられている兵士ヴォチェックが賢明に生きようとしながらも、次第に錯乱し、身を滅ぼしていく様を描く。
本作の演出を手がけるケントリッジは、1955年南アフリカ生まれ。「動くドローイング」と呼ばれる、木炭による素描をコマ撮りした独自のアニメーション作品で知られる。代表作のひとつ《流浪のフェリクス》(1994)をはじめ、独裁や植民地主義、アパルトヘイトといった南アフリカの陰鬱な歴史を表出させた作品を制作。その功績が評価され、2010年には京都賞を、2019年には高松宮殿下記念世界文化賞も受賞している。
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数々のオペラ作品においても、ドローイングを駆使した演出を手がけてきたケントリッジ。ケントリッジが演出を手がけたオペラ作品のMETライブビューイングは、これまでにショスタコーヴィチ『鼻』とベルク『ルル』が上映されており、今回の『ヴォツェック』は3作目となる。
上演劇場で見ることが叶わなくとも、オペラの臨場感を巨大なスクリーンで感じられるMETライブビューイング。この機会にぜひチェックしてみてほしい。