2020年最初の号はアニメーション特集をお届けします。
近年のアニメーションを取り巻く状況をみると、動画配信サービスによって視聴環境が多様化し、音楽業界などとのメディアミックスや、グッズやゲームなどライツ事業が展開されマーケットも活況を呈している。これらを背景に、アニメーションの表現にはどんな変化が起きているのだろうか。本特集では2010年代のアニメ史の見取り図を描くべく、商業アニメからインディペンデント作品まで、国内外で活躍するつくり手たちへのインタビューを行った。
制作現場にいる彼らの声から伝わるのは、3DCGから実写の動きを取り入れたロトスコープまで、様々な技術を駆使しながら、独自のビジュアル世界を生み出そうと日々挑戦を続けていること。そして多くのつくり手が、成熟した受け手の存在やエンターテインメント性を意識しつつ、自ら作品づくりを「楽しむ」ことを大切にしたいという思いである。集団制作を基本とした商業アニメのシステム、予算や期間といったあらゆる制約のなかで、創作の原点に立ち返りながら、表現を更新し作家性を貫く難しさは想像にかたくない。
そうした挑戦の集積として2010年代の日本の特徴を、世界のアニメーションの潮流とも対比しつつ眺めると、インディペンデント性、集団制作における作家性の獲得、ゲーム的世界の影響といったキーワードが浮かんでくる。2020年代のアニメーションを展望するうえでも、これらの視点は有効なガイドになるのではないだろうか。
第2特集では、「サイボーグ宣言」で知られるダナ・ハラウェイを紹介します。フェミニズムや人新世などとも接続するハラウェイの思想とはどんなものか。その理論に影響を受けるアーティストたちの言葉やキーワードから、いまあらためて確認しておきたい。
*
さて、2020年はどんな変動が待ち受けており、作家たちの創造性は、そこでどんな力を発揮するのでしょうか。昨年総編集長に就任した岩渕貞哉から、私、望月かおるが今月号より雑誌『美術手帖』の編集長を引き継ぎましたが、どのような時代であれ、つねに弊誌がつくり手とその活動を支え、受け手との架け橋になれるよう、力を尽くしていきたいと思います。これまでと変わらずご愛読いただけますよう、どうぞよろしくお願いします。
2020.01
編集長 望月かおる
(『美術手帖』2020年2月号「Editor’s note」より)