1920年代、機能主義の建築として成立したモダニズム建築は、いまなお建築デザインに大きな影響力を与え続けている。
そんなモダニズム建築の宝庫とも呼ばれる街、アメリカ・インディアナ州のコロンバスを舞台とした映画『コロンバス』が、2020年3月14日よりシアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開される。
本作の舞台は、エーロ・サーリネンによるミラー邸(アレキサンダー・ジラルドの内装)やノース・クリスチャン教会をはじめ、イオ・ミン・ペイ、リチャード・マイヤー、ジェームス・ポルシェックなどの代表作が建ち並ぶコロンバス。
主人公の韓国系アメリカ人ジン(ジョン・チョー)は、講演ツアー中に倒れた高名な建築学者の父を見舞うため、コロンバスを訪れる。父の容態が変わらないためこの街に滞在することになったジンは、地元の図書館で働くこの街の建築に詳しいケイシー(ヘイリー・ルー・リチャードソン)という女性と出会う。父親との確執から建築に対しても複雑な思いを抱え、コロンバスに留まることを嫌がるジンと、薬物依存症の母親の看病を理由に、コロンバスに留まり続けるケイシー。対称的なふたりが出会い、建築をめぐり、語ることで、それぞれの新しい 人生に向かって歩き出していく。
本作のメガホンをとったのは、ロベール・ブレッソンやアルフレッド・ヒッチコックについてのドキュメンタリーを撮り、 小津映画に欠かせない脚本家・野田高悟に因んで「コゴナダ」と名乗る新進監督。
長編デビュー作となった本作では、奥行きを生かした画面の構図や、間の取り方など、小津の芸術性を研究し、すべてのシーンで「映画の教科書」のような巧みな構図を実現した。
美しい建築とそれをめぐるふたりの心象風景。2020年注目の映画のひとつだ。