ふるさと納税型クラウドファンディングで若手アーティストを支援する。そんな全国初の試みを、京都市がスタートさせた。
「京都市若手アーティスト応援プロジェクト」と題されたこのプロジェクトでは、京都で活動する芸術家の社会的・経済的地位向上を目的に、市内のギャラリーと連携。クラウドファンディングサービス「READYFOR」を使い、京都にゆかりのある若手アーティストの海外アートフェアへの出展を支援する。また、出展作家によるグループ展や報告会などを京都市内で開催することで、京都のアート市場の拡大も目指すという。
支援対象となる作家は、谷中佑輔と笹岡由梨子の2作家。2019年にスタートした、アジアで注目を集めるアートフェア「台北當代(TAIPEI DANGDAI)」への出展を目標に、500万円を調達する。寄付額の選択肢は5000円〜100万円(法人向け)までで、11月25日時点では105万円が集まっている。
京都市が抱く危機感
京都市は今回のプロジェクトの背景として、2017年3月に策定された「第2期京都文化芸術都市創生計画」における「芸術家の社会的・経済的地位の向上につながる各種取組の推進」があるとしている。市はこれまで、芸術家の居住・制作・発表の支援や特性を活かせる仕事のコーディネートや、美術系大学生の作品の評価・購入を通じた経済的支援などを行ってきた。しかしながら、芸術系大学が集積する京都においても卒業後に制作拠点を市内に構える学生は減少の一途をたどっており、市は危機感を抱いているという。
今回のプロジェクトは、そのような状況の改善を目的としており、若手芸術家が京都で創作活動を続けていくための重要な要素である「制作・発表・販売」のうち、「販売」に着目したもの。有識者によるアートマーケットの最新動向を踏まえた出展コンサルティングを行い、京都で活躍する新進気鋭の若手作家の作品が国際的アートマーケットで評価される足がかりをつくる。
なぜクラウドファンディング?
ではなぜクラウドファンディングという仕組みを導入したのか? 前提として、本プロジェクトは京都市が予算措置を行っている直接助成の仕組みだと京都市は説明する。その財源の一部である500万円を、「ふるさと納税型クラウドファンディング」により資金調達。ふるさと納税で現代美術を支援できる新しい取組を周知するとともに、文化芸術に対する「寄付文化」の機運を高める契機としたいとしている。
また従来のふるさと納税制度に比べ、調達資金の具体的な使い道を示すことで、返礼品目的ではなく、地域課題解決のためのプロジェクトに共感した人々から寄附金を集めることもできるのではないかと期待を寄せる。
京都市によるこの全国初の試み。結果次第では、同様の動きが全国の自治体に広がるかもしれない。