文化庁が「不交付」の決定を下した、あいちトリエンナーレ2019に対する補助金約7800万円について、その不交付を決定した審査過程の議事録が存在しないことがわかった。日本共産党の本村伸子議員がTwitterで明らかにした。
これは、本村議員が文化庁に対して問い合わせをした結果判明したもので、京都にある文化庁地域文化創生本部が10月1日に回答したもの。
10月1日、文化庁から
— もとむら伸子(本村伸子) (@motomura_nobuko) October 1, 2019
「あいちトリエンナーレへの補助金不交付を決定した審査の議事録はございません。」
との文書が国会事務所に届きました(怒)
どのような審査で「不交付」が決まったのか知りたいと文化庁に要求していた回答です。 pic.twitter.com/XJ7DZQ3Ujb
文化庁の決定については、9月26日に萩生田文部科学大臣が「文化庁に申請のあった内容通りの展示会が実現できていない。継続できていない部分もある。補助金適正化法等を根拠に交付を見送った」と発表。
同日付で文化庁も「審査の視点において重要な点である,[1]実現可能な内容になっているか,[2]事業の継続が見込まれるか,の2点において,文化庁として適正な審査を行うことができませんでした。かかる行為は,補助事業の申請手続において,不適当な行為であったと評価しました」(原文ママ)とし、補助金適正化法第6条等により補助金を全額不交付とする旨を発表していた。
しかしこの決定については、「文化・芸術分野における公的資金助成外部審査員従事者等有志」によって、決定前に外部審査員の意見聴取がいっさい行われず、文化庁内部のみですべての審査が行われたことが明らかにされている。
本件について、本村議員は「美術手帖」に対し次のようにコメントを寄せた。「今回のあいちトリエンナーレへの補助金『全額不交付』決定=4月25日付の有識者による審査会を経ての文化庁の補助金『採択通知』撤回は、本当に異常です。しかも、文化庁は、愛知県が警備上の懸念などがあったことを報告しなかったからと言いますが、そのことは、申請手続きの際に、報告しなければならない規定にないのです。今回のようなことがまかり通れば、物議を起こすような作品の展示については、どこの美術館もやらないでおこうと判断し、芸術家、表現者の方々が萎縮し、私たちの知る権利も奪われていくことにもつながります。個人の尊厳、歴史的事実、表現の自由、知る権利、民主主義を守るうえで、あいまいにしてはならない事件だと思います」。
なお萩生田大臣は10月1日の閣議後の記者会見で、「不自由展」が再開されても補助金不交付決定は覆さない旨を表明している。