海外作家たちの展示中止が相次いでいる「あいちトリエンナーレ2019」芸術監督・津田大介が、瀬戸内国際芸術祭とあいちトリエンナーレの横断企画としてライブストリーミングサイト「DOMMUNE」に登場。両トリエンナーレの参加作家である村山悟郎と対談を行った。
冒頭、村山は今回の「表現の不自由展・その後」に端を発した一連の流れについて、「『表現の不自由展・その後』の情動性が展覧会全体に非常に悪い影響をおよぼしている」とコメント。トリエンナーレ全体のキュレーションについて、「こんなことになるなら先に言っておいてくれ、と。作家によっては作品の中に(表現の不自由展・その後への)応答性を入れることもできた」と指摘。「作家の知る権利」が侵害されていると語った。
「自分の作品がどういいうコンテクストに置かれるかを作家は知る権利があるし、それが侵されている。直撃を受けたのは韓国の作家たち。僕が一番問題だと思うのは、彼らをそういうパースペクティブに巻き込んだこと。韓国のアーティストにも前もって伝える必要があったかもしれない。作家がないがしろにされていると感じてしまう。信頼関係が崩れてくることになる」。
津田はこの対談で、展示中止の理由については「検閲ではない」という考えを改めて主張。いっぽうで海外作家たちは「検閲」を理由に展示辞退などを申し出ており、「認識にずれがある。難しいところ」と語った。なお、すでに展示が中止されているイム・ミヌクとパク・チャンキョンについては謝罪のため韓国を訪問し、今後について協議をする予定だという。
村山は「表現の不自由展・その後」のキュレーションのあり方についても指摘。次のように語った。「『表現の不自由展・その後』は非常に強い姿勢で、覚悟を持って取り組んできた。それは尊重したうえで、津田だけではなく、キュレーターたちが展示への提案をすべき。(展示空間を)小さくしたことで、検閲の歴史が展示としてたどれなかった。キュレーションに不備があった。専門的な見解がどれくらいフィードバックされていたのか」。そのうえで、「再開を目指してやるしかない。内容について、(不自由展実行委員会に)働きかけだけはしてほしい」と強く要望した。
いっぽう津田は、「表現の不自由展・その後」を公的な場でやろうとした意図について、「公立美術館でやるときは検閲や政治の影響が避けられない。検閲に屈しないモデルケースとしたかった」と説明。「表現の不自由展・その後」の展示再開を目指すのか、という問いに対しては、「『こうだ』と答えることは立場的に難しい。現場は絶対に無理だと思っている」としながら、「いまのまま再開して『よかったね』とはならない。どう文脈に落とし込んで、県民はもちろん、保守派も納得したうえで再開する道をつくれるのか」と心境を語った。
展示再開については、「あいちトリエンナーレのあり方検証委員会」第1回会合においても、太下義之委員から「『安全性確保したうえでの展示再開』については極めて困難で、展示再開の声明が多数出ている状況は、現実とずれている」という指摘がなされており、依然困難な状況だ。
そのうえで、津田は「アーティスト、事務局、職員スタッフ、知事、この問題に関心を寄せている人とのゴールの共有をこの1ヶ月以内に進めなくてはいけない」としており、明確なゴールの共有が喫緊の課題であるとの認識を示した。
なお検証委員会においても、県民、作家、キュレーターや識者を交えた「表現の自由」に関する公開フォーラムを開催する方向が示されている。