日本科学未来館(館長・毛利衛)は、現在進行形の科学技術を体験できる、東京・お台場の科学館。「世界をさぐる」「未来をつくる」「地球とつながる」の3つのゾーンで構成される常設展示はぞれぞれ、第一線で活躍する科学者・技術者の監修にもとづき制作されているが、ここにメディア・アーティストで、筑波大学准教授の落合陽一が総合監修する展示「日常に溶け込む計算機環境、自然と人間」(仮称)が新たに加わることになった。
「未来をつくる」ゾーンに誕生するこの展示は、高度に発達したコンピュータ(計算機資源)がつながりあい、そこで動作する人工知能の技術が社会のすみずみに普及した未来社会について考えることをうながすもの。計算機によって成り立つ未来社会における人間と自然、世界観とは何かを考えると同時に、その裏に存在するデータ処理と表示する技術を体験することで、新しい表現の可能性について思考をめぐらせることができる。
展示内容は次のように計画されている。まず、陶器や熱帯魚などの本物と、計算機資源によってつくり出された本物と見間違うほど精巧なコピーを対比。こうした多くの展示物で来場者の知覚を揺さぶったうえで、モルフォ蝶の実物標本と、最新の印刷技術で再現した蝶を混在させ、本物とつくりものの区別が意味をなさない世界などを提示する。さらには、その背景にある「統計的解法」や「解析的解法」といった技術的な思想の移り変わりを、音楽や写真、通信技術など私たちに身近な題材をもとに振り返り、その未来について来場者とともに考えていくような展示となる。
落合が、未来館のスタッフや専門家と2年にわたる長い議論を重ねたうえで実現する本展に期待したい。