正々堂々とフェイクニュースを報道できる日であるとともに、各メディアのユーモアセンスの真価が問われるエイプリル・フール。今年、ニュースメディアはどんな嘘をついたのか? アートに関する反響の大きなフェイクニュースをプレイバックする。
ジェフ・クーンズ、引退を発表
ニューヨーク拠点のニュースメディア「Hyperallergic」が報じたのは、アーティストのジェフ・クーンズが、2019年末で美術界を退くというフェイクニュース。
引退の原因は、度重なる有罪判決にともなう活動の失速と「啓示」。「私は、自分の活動に誇りを持っています。そして、私はキャリア初期より啓示によって導かれてきましたが、今度はその啓示によってコマーシャルアートの道を終えようとしている」。そして「今後は、自身と家族のために作品を制作していきます」といった作家のフェイクコメントで締めくくられている。クーンズが持つスキャンダラスなイメージと、約4000文字にわたって説明される内容との絶妙な合致に、SNS上ではこのニュースを信じる人々の声も目立った。
世界最高額の絵画、消える
2017年11月、クリスティーズで世界最高額となる約508億円で落札されたレオナルド・ダヴィンチの《サルバトール・ムンディ》。本作は18年9月よりルーヴル・アブダビで一般公開されることが決定していたが、突如延期に。これは、「じつは作品の所在が不明であることが理由」というフェイクニュースを、香港ベースのデジタルメディア「Hypebeast」が報じた。
コメント欄には、「私の家にあります」「誰かが(『ダ・ヴィンチ・コード』に主演した)トム・ハンクスの家を探すべき」「あるいは(『オーシャンズ8』に出演した)サンドラ・ブロックの家かな」など、まったりとこのジョークを楽しむ雰囲気が流れている。
メトロポリタン美術館の所蔵品を「ときめき」で整理
アートニュース系サイトの大手「artnet」は、フェイクニュースを4本立てで紹介。なかでも注目は、2015年に『TIME』誌で「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたほか、Netflixオリジナルコンテンツ『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~』でその人気を不動のものにした、片づけコンサルタントの近藤麻理恵(通称:こんまり)のニュースだろう。
「ときめくものだけ手元に残す」整理術で知られる近藤が、メトロポリタン美術館の所蔵品アドバイザーに就任したというこのフェイクニュースでは、エジプトの遺物、キリストの磔刑像が「ときめかない=売却される恐れ」として挙げられている。