AI(人工知能)が“描いた”作品がクリスティーズで行われたオークションに世界で初めて出品されたのは2018年10月のこと。これに続き、世界初のAIによる持続的に自動生成する作品が、3月6日にサザビーズ・ロンドンで行われる現代美術のデイ・オークションに登場する。予想落札価格は3万〜4万ポンド(約430万〜570万円)となっている。
AIによる作品《The Butcher's Son》が昨年のルーメン賞で金賞を受賞したことで、注目を集めていたドイツ人のデジタルアーティスト、マリオ・クリンゲマン。今回出品される作品は、そのクリンゲマンが手がけた《Memories of Passersby I》と題されたインスタレーションだ。
本作は、AIの「頭脳」を蔵する木製のコンソールテーブルと、ポートレートイメージを出力する2枚のスクリーンによって構成される。男性と女性のポートレートは、それぞれのスクリーンに変化しつつ出現する。流されるイメージは事前に設定されたものではなく、AI自身のアルゴリズムによってリアルタイムで出力されたもの。一度出現したイメージは二度と現れないこともこの作品の大きな特徴だ。
マックス・エルンストなど超現実主義の画家の作品を含め、17世紀〜19世紀の何千枚もの肖像画を使ってAIを“訓練”してきたクリンゲマンは、同作についてこう語る。「この作品は、観衆がそれを見ているあいだに絵を作成するという非常に強力なAIを組み込んでいます。このAIは、顔を生み出し、変化させ、消えていくというループをつくりだし、またそのループを観察してフィードバックを行います」。
サザビーズの現代美術のデイ・オークション部門長、マリーナ・ルイス・コロメルは、「AIによるアートは美術史のなかで地位を獲得した最新の革新であり、クリンゲマンの作品はこの分野でエキサイティングな新時代の最先端に立っています」とコメントしている。