古くは岡倉天心が美術館の東洋部長を務めるなど、日本との所縁が深いアメリカのボストン美術館。この美術館が、日本を代表するアパレルメーカー・ユニクロとタッグを組んだ。
ボストン美術館は1876年に開館したアメリカを代表する美術館のひとつ。国や州の財政的援助を受けずにコレクションの拡充を続け、現在は世界有数となる約50万点の作品を所蔵する巨大美術館だ。コレクションには、古代エジプト美術から中国美術、フランス絵画、アメリカ絵画、版画・写真、現代美術までが含まれているが、とくに数多くの日本美術コレクションを所蔵していることが特徴となっている。
そのコレクションを活用したのが、ユニクロから8月27日に発売されるUT「KATAGAMI」コレクションだ。
UT「KATAGAMI」コレクションは、ボストン美術館が所蔵する日本の型紙をデザインに用いたTシャツ。メンズとウィメンズで8種類ずつの柄が展開され、和紙を思わせるスラブ生地に動植物や紋様などの型紙が施されている。
今回のプロジェクトはユニクロがボストンに出店したことが契機。「ボストン美術館に所蔵されている日本の型紙を弊社が再解釈し、Tシャツに載せて発信するのはとてもユニークだという考えから、生まれたもの」だとユニクロのUTコラボレーション推進部部長・松沼礼は語る。
ボストン美術館は4200種類もの型紙を所蔵しており、今回のUTではまず、美術館側が状態のいい型紙をピックアップ。そこからユニクロのデザイナーがユニクロユーザーの好みに合う柄として16種類を選定した。
ユニクロ商品本部でライセンスリーダーを務める風間純枝は、その選定ポイントについてこう語る。「今回の特徴は、有名なパターンだけでなく、型紙をつくるための道具を模したパターンなどを採用した点です。私たち日本人も知らない型紙の世界を、UTを通じて伝えたいと思い選びました。トラディショナルなだけでなく、新しく見えるようなデザインに落とし込んでいます」。
Tシャツで美術館のコレクションにアクセス
いっぽうのボストン美術館側は、自館の所蔵品が大量生産されるTシャツとして展開されることに対し、どのような考えを抱いているのか? ボストン美術館副館長のキャサリン・ゲッチェルは「このコラボレーションで、多くの方々に我々のコレクションにアクセスしてもらう機会が増えますね。そして美術館と、購入した個々人の間に新たな関係性が生まれます」と話す。
「(コレクションへの)アクセスを増やすための方法として、作品の貸し出しなどもありますが、こういった商品開発も重要です。これまでボストン美術館を知らなかった人でも、UTを通してその名前を覚えてもらえますよね。そのなかから、実際に美術館に来館していただける人も出てくるはずです」。
ユニクロとのコラボレーションは、「ボストン美術館にとって19世紀から続く日本との関係性を、アップデートしていくもの」だとも語る。「実際の型紙は非常に小さく、茶色いものなのでわかりにくいのですが、こうしてユニクロがTシャツとしてデザインしたことで、命が吹き込まれたように感じますね」。
18世紀に日本からアメリカへと渡った型紙が、Tシャツというかたちで里帰りする今回のプロジェクト。実物を店頭でチェックしたい。