エッセードキュメンタリーやレクチャーパフォーマンスなどを行い、インターネット社会におけるイメージの循環や、その構造的な矛盾の分析を試みてきたドイツ・ベルリン在住の映像作家ヒト・シュタイエル。その来日が決定し、2018年4月4日に東京・浅草演芸ホール東洋館にて上映会とトークイベント「ヒト・シュタイエル:Q&A」が開催される。
ヒト・シュタイエルは1966年ミュンヘン生まれ、ベルリン在住の映像作家・ライター。映像史やメディア論を背景に、インターネット以後のイメージの流通や、社会が抱く矛盾に踏み込んだ独自の分析を展開している。日本映画学校で今村昌平、原一男らに学んだ後、ウィーン美術アカデミーにて哲学の博士号を取得、現在はベルリン芸術大学ニューメディア芸術学部教授を務めている。そのほか、ヴェラ・トールマンやボアズ・レヴィンとともに、代理政治研究センター(Research Center for Proxy Politics)を共同設立するなど、幅広い活動で知られている。
本イベントでは、2017年のミュンスター彫刻プロジェクトで発表した新作を含む3作(うち2作は日本初公開)を上映し、シュタイエルとともに作品を解題するほか、質疑応答が行われる。
上映作品は、フィクショナルな意味を集めて循環する英雄のイメージを、10月革命後の季節の中にとらえた《ノーベンバー》(2004)、軍事と美術における二つの暴力が絡み合う様子を2チャンネル映像で映し出す《アブストラクト》(2012)、iPhoneの「Siri」との会話が不確実な未来を予見する《ロボット・トゥデイ》(2016)の3本だ。
個人史から国際政治、政治経済から美学的地点へと展開するこれらの作品は、クルジスタンの政治抗争をめぐって命を落としたシュタイエルの旧友、アンドレア・ウルフに向けられていてる。
また、本イベントで上映する作品に関連して選ばれた論考3篇を小冊子として作成し、テキストとイメージの展開する理論家としてのアーティストの側面に焦点を当てる。
上映会とトークイベント、そしてテキスト読解によって、シュタイエルのこの10年の考え方の変遷を追うという充実したプログラム。シュタイエルの思考実験に直接触れられるチャンスだ。