版画家・浜口陽三(1909〜2000)は、「カラーメゾチント」という独自の銅版画技法を編み出し、物体が光を帯び闇から浮かび上がるような独特の静物画を制作。多くの国際美術展で受賞を重ね、世界を代表する銅版画作家のひとりとして広く知られている。
浜口の作品を常設展示しているミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションでは、浜口と現代の作家を結びつける展覧会を継続的に行っている。今回は、さくらんぼや毛糸といった身近なモチーフを印象的に用いた浜口にちなみ、「忘れられない、」というタイトルのもと、身近なものを題材とし、鑑賞者に何かを思い起こさせるような作品を集めた展示を行う。
出展作家は、少年少女の姿を軽い筆致と透明感ある色彩で描くカロリーナ・ラケル・アンティッチ、日常で目にする事物や景色を、ユーモアを交えて写生するように彫刻する前原冬樹、画面からにじみ出るような光を、重ねた色彩とワックスによって表現する向山喜章の3名。作家ごとにコーナーを設けるのではなく、全体でひとつの空間をつくるように展示される。
会期中には、作家による作品解説や、ワークショップ、サウンドパフォーマンスなどのイベントも開催される。