国立西洋美術館で「チュルリョーニス展 内なる星図」が来春開催へ。リトアニアの画家、34年ぶりとなる大回顧展【3/3ページ】

 リトアニアは長くはロシア帝国の支配下にあったが、1904年の日露戦争でのロシアの敗戦と翌年のロシア革命を受け、民族解放の機運が急速に高まった。

 この頃画家として成熟期を迎えていたチュルリョーニスは、リトアニアにおける神話や民芸といった自国の文化を作品に取り入れることによって、失われた国家のアイデンティティを取り戻すための芸術活動を展開していった。第3章「リトアニアに捧げるファンタジー」では、民衆の独立を願った静かな抵抗が描かれた作品が取り上げられるという。なお、神智学的な壮大な精神世界が描かれた《祭壇》(1909)も日本初公開となる。

ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス おとぎ話(王たちのおとぎ話) 1909 キャンバスにテンペラ
国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)所蔵
M. K. Čiurlionis National Museum of Art, Kaunas, Lithuania.
ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス 祭壇 1909 厚紙にテンペラ
国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)所蔵
M. K. Čiurlionis National Museum of Art, Kaunas, Lithuania.

 エピローグでは、小ぶりな作品が多いチュルリョーニスにとって、最大サイズである野心的作品《レックス(王)》が展示。リトアニアの土着の自然崇拝をはじめ、世界の多岐にわたる思想を反映した本作は、さながら壮大な交響詩のようなイメージだ。こちらも日本初公開の作品だ。

ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス レックス(王) 1909 キャンバスにテンペラ
国立M. K. チュルリョーニス美術館(カウナス)所蔵
M. K. Čiurlionis National Museum of Art, Kaunas, Lithuania.

 2000年以降、パリのオルセー美術館をはじめ、ヨーロッパ各地で展覧会が開催されるなど再評価の機運が高まるチュルリョーニス。その世界を堪能できる貴重な機会となるだろう。

編集部