「穴」と「鏡」が映す循環の視点。石澤英子、小山市立車屋美術館で日本初の美術館個展を開催へ

アムステルダムを拠点に25年間活動し、2024年に島根県出雲市へ移住した現代美術家・石澤英子。二項対立を超えた「世界の循環」をテーマにした日本初の美術館個展が、小山市立車屋美術館で開催される。

石澤英子 A Great Sleeping Bear 2008-

 栃木県の小山市立車屋美術館で、9月20日から現代美術家・石澤英子の個展「When the sun goes up here, the sun goes down over there こちらに太陽が昇るということは、そちらで太陽が沈むということ」が開催される。アムステルダムを拠点に25年間活動してきた石澤にとって、日本の美術館での初個展となる。会期は9月20日〜12月7日。

 1981年奈良県に生まれた石澤は、19歳でオランダへ移り、テキスタイルや応用美術を学んだ後、ヨーロッパを中心に活動を展開。2024年には生活拠点を島根県出雲市へ移した。その作品はテキスタイル、立体、インスタレーション、コラージュなど多岐にわたるが、共通して「穴」「型を取る」「鏡」「循環」といったモチーフが繰り返し登場する。これらは「境界線」や「調和」といった視点を象徴し、西と東、光と影、現実と幻想といった二項対立的にとらえられがちな関係性を、ひとつの世界に共存する要素として提示している。

石澤英子 Dances in Formations 2015

 本展では、2008年に制作し「リアルすぎる熊」としてSNSを中心に国際的な話題を呼んだ「the Great Sleeping Bear」プロジェクトのほか、継続的に取り組んでいるコラージュ作品、そして出雲へ移住後に手掛けた新作を展示する。これらを通じて、アムステルダムと日本、2つの文化圏を往還してきた石澤の視点を紹介する。

 また、広報物は牧寿次郎が手掛け、蛇腹折りの造本によって展覧会タイトルが示す「世界の循環性」を表現している。会期中には石澤によるワークショップや担当学芸員によるギャラリートークなども開催予定であり、国内で広く作品を知る機会の少なかった石澤の活動に触れる貴重な場となるだろう。

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編集部