東京都渋谷公園通りギャラリーで、「今村遼佑×光島貴之 感覚をめぐるリサーチ・プロジェクト 〈感覚の点P〉展」が開催される。会期は2月15日〜5月11日。
本展タイトルの「感覚の点P」とは、数学の問題に用いられる「任意の点P」を「ある人が持つ独自の感覚」になぞらえたもので、ひとりひとり異なる感覚を通して、多様な世界の在り方にふれてみることを試みることを表している。
本展では美術作家の今村遼佑と光島貴之による作品展示と、感覚をめぐるリサーチの記録を報告・展示。世代も制作スタイルも異なるふたりは、京都を拠点に2022年頃より対話をはじめ、共通の体験を糸口に個々の美術作家としての感覚の違いに注目して、そこから生まれる新たな表現を探ってきた。
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今村は1982年京都府生まれ。インスタレーション、映像、絵画、テキストなど多様な手法で、生活の中のささやかな出来事を取り上げ、見る人の記憶や感覚に働きかける表現を行っている。
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光島は1954年京都府生まれ。10歳の頃に失明し、鍼灸を生業としながら、テープやカッティングシートを用いた「さわる絵画」の他、「触覚コラージュ」、「釘シリーズ」など独自の方法で、自身の身体感覚を投影した新たな表現手法を探求してきた。
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東京都渋谷公園通りギャラリーでは、ふたりの活動をより多くの人々と共有する試みのひとつとして、2024年5月にプレイベントを開催。今村と光島の作品展示のほか、ふたりが共同制作した、触れて鑑賞する作品《触覚のテーブル》を用いたワークショップを実施した。本展ではこれに続くかたちで、新たに渋谷で制作された作品やリサーチの記録を加え、これまでの軌跡とともに紹介する。
目の見える今村と全盲の光島、ふたりのリサーチは2022年に石庭を眺めることから始まり、見える人もしくは見えない人のように、二項対立構造的な説明では表現できない複雑さをもってきた。その内容は、野外彫刻や森の木にふれる、点訳本(点字図書)について考察する、光島の感覚をたどりながら近所を歩く、スルーネットピンポン(誰もが同じルールでプレーできるバリアフリースポーツ)をするなど、多岐に渡ふ。本展では、10件を超えるリサーチの記録を一堂に展示・報告する。
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また、本展では、触れることができる作品を多数展示。今村のインスタレーション作品《プリぺアド・トイピアノ》は、鑑賞者がおもちゃのピアノにふれると、鍵盤の数と同じ32個の仕掛けが3つの展示室のどこかで動くというもの。また、光島貴之のレリーフ状の作品《さやかに色点字 ― 中原中也の詩集より》は、釘やカッティングシートなど、手ざわりの異なる多様な素材の組み合わせに鑑賞者が触れることで、光島の感じた世界をたどることができる。
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加えて、複数の関連イベントも開催される。作家が特別ゲストとともにファシリテーションする《触覚のテーブル》のワークショップのほか、《プリペアド・トイピアノ》の演奏会、スルーネットピンポン体験会、鑑賞会などが予定されている。
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