今週末に見たい展覧会ベスト7。カルダーから国芳、竹久夢二、横山奈美まで

今週末までに開幕・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「カルダー:そよぐ、感じる、日本」展の展示風景より

コロナ禍の「距離」を忘れないため。「遠距離現在 Universal / Remote」(国立新美術館

展示風景より、エヴァン・ロス《あなたが生まれてから》(2023)

 東京・六本木の国立新美術館で、現在の社会のあり方に取り組んできたアーティスト8名と1組の作品を紹介する展覧会「遠距離現在 Universal / Remote」が6月3日まで開催されている。レポート記事はこちら

 本展に参加するのは井田大介、徐冰(シュ・ビン)、トレヴァー・パグレン、ジョルジ・ガゴ・ガゴシツェ+ヒト・シュタイエル+ミロス・トラキロヴィチ、地主麻衣子、ティナ・エングホフ、チャ・ジェミン、エヴァン・ロス、木浦奈津子。キュレーションは同館特定研究員の尹志慧が担当した。

 担当キュレーターの尹は、本展に込めた意義を次のように語った。「日に日に忘却の彼方に遠ざかるパンデミックの日々を、展覧会というかたちで振り返ろうと試みた。コロナ禍は、ディスタンスが要請され、また移動が制限されたことで物理的な距離も感じた。総じて『遠さ』を認識させられたと言え、偏在する不均衡や格差、社会の問題における『遠さ』が浮き彫りになった。いま、次第に忘れられていくこの『遠さ』への意識を再び呼び戻したいと考えた」。タイトルの「遠距離現在 Universal / Remote」には、「『遠くにある現在』を忘れず、そして『Universal』と『Remote』を分断して思考してみよう」という意味合いが込められている。

会期:2024年3月6日〜6月3日
会場:国立新美術館 企画展示室1E
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜18:00(金土〜20:00)
料金:一般 1500円 / 大学生 1000円

初期の貴重な作品群が集結。「カルダー:そよぐ、感じる、日本」(麻布台ヒルズ ギャラリー)

展示風景より

 東京では約35年ぶりとなるアレクサンダー・カルダー(1898〜1976)の個展「カルダー:そよぐ、感じる、日本」が、麻布台ヒルズ ギャラリーで始まっている。レポート記事はこちら

 本展は、ニューヨークのカルダー財団理事長でありカルダーの孫でもあるアレクサンダー・S・C・ロウワーのキュレーションによるもの。今年、麻布台ヒルズスペースをオープンするペース・ギャラリーの協力のもと、カルダーの代表作であるモビール、スタビル、スタンディング・モビールから油彩画、ドローイングなど、同財団が所蔵する1930年代から70年代までの作品約100点によって構成されている。

 展覧会は、1968年のカルダーの晩年の作品から始まり、初期作品に入り、そして晩年(1973年)の作品で終わるようにようにデザインされている。なかでも、1925年のドローイング群や1931年に展示されて以来一度も公開されたことがなかったという貴重な作品が紹介されている。ぜひ会場にて確かめてほしい。

会期:2024年5月30日〜9月6日
会場:麻布台ヒルズ ギャラリー
住所:東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階 
開館時間:10:00〜18:00(金、土、祝前日は〜19:00) ※最終入館は閉館の30分前まで
休館日:6月4日、7月2日、8月6日
料金:一般 1500円(1300円) / 専門・大学生 1200円(1,000円) / 高校生 1000円(800円)
※()内はウェブからの事前予約料金。

220点の約半数は初展示。「国芳の団扇絵 ―猫と歌舞伎とチャキチャキ娘」(太田記念美術館

歌川国芳 鏡面シリーズ 猫と遊ぶ娘 前期展示

 多彩なジャンルで活躍し、現代人にも人気の浮世絵師・歌川国芳(1797~1861)。その団扇絵だけを紹介する史上初の展覧会「国芳の団扇絵 ―猫と歌舞伎とチャキチャキ娘」が、太田記念美術館で開催される。

 団扇は、江戸っ子にとって夏の暑さをしのぐための必需品であったが、同時にデザインを楽しむお洒落のアイテムでもあり、また、歌舞伎ファンにとっては大事な推し活グッズでもあった。この団扇をつくるための浮世絵、すなわち団扇絵もじつは人気が高く、国芳も積極的に手がけていた。

 消耗品であることから現存数が少ないなか、本展では初展示作品約100点を含む220点を紹介。目にも楽しく涼しげな、そして知られざる国芳団扇絵の世界を存分に堪能してほしい。

会期:[前期]2024年6月1日~6月25日、[後期]2024年6月29日~7月28日
会場:太田記念美術館
住所:東京都渋谷区神宮前 1-10-10 
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:30~17:30 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:6月3日、6月10日、6月17日、6月24日、6月26〜28日、7月1日、7月8日、7月16日、7月22日
料金:一般 1000円 / 大高生 700円 / 中学生(15歳)以下 無料

住友コレクションから厳選された物語絵と歌絵。「歌と物語の絵 ―雅やかなやまと絵の世界」(泉屋博古館東京

メインビジュアル

 古来、語り読み継がれてきた物語は、古くから絵巻物など絵画と深い関係にあった。和歌もまた、三十一文字の世界が絵画化されたり、絵に接した感興から歌が詠まれたりと、絵画との相互の刺激から表現が高められてきた。

 こうした歌と物語の絵を集めるのは、6月1日から泉屋博古館東京で開催される企画展「歌と物語の絵 ―雅やかなやまと絵の世界」だ。

 物語絵や歌絵の特徴のひとつは、精細な描写と典雅な色彩。宮廷や社寺の一級の絵師が貴人の美意識に寄り添い追求した「やまと絵」の様式を継承することだろう。本展では、近世の人々の気分を映し出す物語絵と歌絵を、館蔵の住友コレクションから選りすぐって紹介。雅やかで華麗、ときにユーモラスな世界を楽しんでほしい。

会期:2024年6月1日~7月21日
会場:泉屋博古館東京
住所:東京都港区六本木1-5-1 
電話番号:050-5541-8600
開館時間:11:00~18:00(金〜19:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、7月15日は開館)、7月16日
料金:一般 1000円 / 大学・高校生 600円 / 中学生以下、障がい者手帳等ご呈示の方 無料

「平和」や「自由」の意味について改めて考える。「Keith Haring:Into 2025 誰がそれをのぞむのか」(中村キース・へリング美術館

All Keith Haring Artwork ©Keith Haring Foundation Courtesy of Nakamura Keith Haring Collection.

 中村キース・ヘリング美術館で、来年戦後80年を迎えるいま、キース・ヘリングの反戦・反核を訴える取り組みをたどり、作品に込められた「平和」と「自由」へのメッセージを、改めて現代の視点から紐解く展覧会「Keith Haring:Into 2025 誰がそれをのぞむのか」が開催される。

 1980年代のアメリカ美術を代表するアーティスト、キース・ヘリング(1958〜1990)は、明るく軽快な作風で知られるいっぽう、彼の作品の根底には社会を鋭く洞察する眼差しがあった。ヘリングは、時にユーモラスに、時に辛辣に社会を描写し、平和や自由へのメッセージを送り続けた。

 いまなお世界には1万2000にのぼる核弾頭が存在し、絶え間なく戦争が続くなか、来年には第二次世界大戦の終結から80年の節目を迎えようとしている。本展をきっかけに、ヘリングの眼差しを通して世界が抱える課題に向きあい、現代における「平和」や「自由」の意味について考えてみてはいかがだろうか。

会期:2024年6月1日~2025年5月18日
会場:中村キース・へリング美術館
住所:山梨県北杜市小淵沢町 10249-7 
電話番号:0551-36-8712
開館時間:09:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:定期休館日なし
料金:大人 1500円 / 16歳以上の学生 800円 / 障がい者手帳をお持ちの方 600円 / 15歳以下 無料 ※各種割引の適用には身分証明書の提示が必要

初公開の作品も並ぶ。「生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界」(東京都庭園美術館

メインビジュアル

 「大正ロマン」を象徴する画家であり、詩人でもあった竹久夢二(たけひさ・ゆめじ)。その回顧展「「生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界」が、東京・白金台の東京都庭園美術館で開催される。

 本展は、夢二の生誕140年を記念して、最新の研究に基づく新たな視点からその生涯をたどるもの。初公開資料を含む約180点の作品が、夢二郷土美術館コレクションを中心に紹介される。

 なかでも大きな見どころは、長らく所在不明であった油彩画《アマリリス》だ。同作は近年の調査により発見。夢二の油彩画は現存するだけでも約30点と少なく、本作はその来歴も含めて貴重な作例だ。発見後、東京で公開・展示する初めての機会となる。また、夢二が欧米滞在中の出来事を残したスケッチから、初公開となるものも並ぶ。

会期:2024年6月1日~ 8月25日
会場:東京都庭園美術館 本館+新館
住所:東京都港区白金台5-21-9
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし7月15日、8月12日は開館)、7月16日、8月13日
料金:一般 1400円 / 大学生(専修・各種専門学校含む)1120円 / 中・高校生 700円 / 65歳以上 700円

新作絵画約10点を展示。横山奈美「広い空に / Big Sky Mind」(N&A Art SITE

横山奈美 Shape of Your Words -T.H.- 2024 油彩、麻布 31.8 × 41 cm

 南條史生による企画展シリーズ「NANJO SELECTION」。その第4弾として、横山奈美による個展「広い空に / Big Sky Mind」が、東京・目黒のN&A Art SITEで開催される。

 横山は、消費され捨てられる物に光をあてそれを精緻に描く「最初の物体」シリーズや、自身でデザインしたネオン管をモチーフに、ガラス管や背後に存在する配電線、フレームまで描く「ネオン」シリーズなどの絵画作品で注目を集める作家だ。近年では、ケンジタキギャラリー(2024、2023など)や岐阜県美術館(2021)、金沢21世紀美術館(2019)などで個展を開催、グループ展では「VOCA展2023」(上野の森美術館)や「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」(森美術館)に参加するなど、精力的な活動を行っている。 

 本展では、横山の友人や知人など様々な人が筆記した文字をネオン管にし、それを克明に描く「Shape of Your Words」シリーズから、「Sky」という言葉をモチーフとする新作絵画約10点が展示される。

会期:2024年5月31日~6月29日
会場:N&A Art SITE
住所:東京都目黒区上目黒1-11-6
電話番号:03-6261-6098
開館時間:12:00~17:00
休館日:日、月、祝
料金:無料

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