才能豊かな気鋭の振付家と世界中から集まった選りすぐりのダンサーたちによる共同制作によって、年間約10の新作を発表しているオランダの「NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)」。その珠玉の5作品を楽しめる「NDT (ネザーランド・ダンス・シアター) プレミアム・ジャパン・ツアー2024」が、今年6月から7月にかけて高崎芸術劇場 大劇場、神奈川県民ホール 大ホール、愛知県芸術劇場 大ホールで開催される。
本イベントは、愛知県芸術劇場とDance Base Yokohamaが、高崎芸術劇場、神奈川県民ホールと連携して行うものだ。世界でも高い人気を誇るNDTは2019年に13年ぶりの来日を果たし、神奈川公演では異例の立ち見がでる盛況で、大きな話題となった。今回、このNDTが2020年より芸術監督を務めるエミリー・モルナーとともに5年ぶりに再来日。著名な振付家が手掛けた5作品から各公演3作品が組み合せで上演される。
今回の来日公演に選んだのは、いまもっとも注目度の高い人気振付家であるNDTの常任振付家(アソシエイトコレオグラファー)のクリスタル・パイトとマルコ・ゲッケ、そしてピーピング・トムを率いて目覚ましい活躍を見せるガブリエラ・カリーソ、L-E-Vの振付家シャロン・エイアール&ガイ・べハール、さらに巨匠ウィリアム・フォーサイスの世界最前線の表現者たちによる、カンパニーの魅力を余すとことなく知ることのできる多様な作品群だ。各作品を紹介しよう。
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Jakie
日本では初めての本格的な紹介となる、いま世界から注目を集めるイスラエル出身のデュオ、シャロン・エイアール&ガイ・ベハールによる作品。16名のダンサーがヌーディーなボディスーツに身を包み、つま先立ちでバランスをとりつつ身を寄せ合う姿が暗闇から浮かび上がる。繊細かつ強靭な肉体のアンサンブルと身体を内側から揺さぶる低音のビートによる、エネルギーがほとばしる展開にひと時も目が離せない。
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One Flat Thing, reproduced
舞台上に、轟音を立てて大きな机20台がダンサーとともに現れる。ダンサーはランダムに出入りしながら、複数の規則に基づいて、休みなく踊り続ける。「テーブルダンス」という名称で親しまれるウィリアム・フォーサイスの代表作のひとつであり、世界の多数のバレエ団のダンサーによって踊られている。彼が追求したバレエの脱構築の先にあるテクニックと、緩急、ダンサーと舞台空間の緻密な設計を見ることができるスリリングな作品。
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Solo Echo
前回の来日公演で上演した『The Statement』や、2023年に自身が主宰するキッドピボットが上演した『リヴァイザー』で日本に鮮烈な印象を残したクリスタル・パイト。降りしきる雪を背景に、幻想的な世界をつくり出す本作は、ブラームスの著名な2つのソナタにのせて紡がれる。2017年にブノワ賞(振付家部門)を受賞したパリ・オペラ座バレエ団『The Seasons’ Canon』と同様に、音楽よりインスピレーションを得て創作された傑作。
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La Ruta
夢に関する言説に基づいて展開されるガブリエラ・カリーソ作の『LaRuta』は、スペイン語で「道」を意味する。ピーピング・トム作品と共通する卓越した身体性はもとより、ジャパニーズ・ホラーを彷彿とさせる侍や墓などの断片的なイメージや点滅する照明、舞台装置により、倒錯した世界へと観る者を導いていく。「ユーモアを散りばめたディストピア的な夢」「悪夢のような作品」(Bachtrack紙)とも語られるNDTにとっても挑戦的な衝撃作。
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I love you, ghosts
NDTが長らく拠点としていたルーセント・ダンス・シアターへのオマージュとして、マルコ・ゲッケがNDTへ振り付けた11作目(2021年に新劇場アマーレ開館)。前回の来日公演で上演した『Woke up Blind』で多くの観客を魅了した、手や腕を素早く小刻みに動かす身体言語は本作でも健在。そのミニマルなムーブメントは観客へも緊張感と没入感を生み出す一方で、ハリー・ベラフォンテによる楽曲の歌声が作品の情感を溢れさせる。
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