アーティスティック・ディレクター(以下、AD)に北京を拠点に活躍するリウ・ディン(劉鼎)とキャロル・インホワ・ルー (盧迎華)を迎え、テーマを「野草:いま、ここで生きてる」として開催される「第8回横浜トリエンナーレ」(2024年3月15日~6月9日)。その参加アーティストの第1弾が発表された。
本展には67組の多様な国籍のアーティストが参加し(2023年11月28日現在)、うち日本で初めて紹介されるのは30組。会場となっている横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKOで展示されるほか、一部は、3会場の建物の外側や街なか、横浜美術館の無料エリアなどでも展開される。
おもな発表アーティストを紹介したい。北欧とロシア北部を移動するトナカイ遊牧民「サーミ族」の血筋をひくヨアル・ナンゴは1979年アルタ(ノルウェー)生まれ、ロムサ/トロムソを拠点に活動している。地域内の資源循環に関心をもち、現地の素材をとりいれた仮設の構築物をつくることで、資源不足や気候変動に直面する今の社会に対し、先住民の知恵にならった 人と自然の共生のあり方を示す実践を続けている。本展では横浜美術館のファサードにも「サーミ族」のことばを用いた作品を展示する予定だ。
ピッパ・ガーナーはアメリカ・イリノイ州のエヴァンストン生まれで、カリフォルニアを拠点に活動している。ジェンダーを超えた作品で知られ、広告がつくり出す男女のイメージや消費社会に「生きづらさ」を感じてきた自らの経験をもとに作品を発表。1980年代にはアート・プロジェクトとして自ら異なる性に移行し、性別、肌の色、年齢や既成概念にとらわれない多様性のあり方を社会に問うている。
ルンギスワ・グンタは1990年、南アフリカ・ポートエリザベス生まれで、ケープタウンを拠点に活動。南アフリカにおける家父長制や植民地主義から生まれた不平等がひそむ「風景」を立ち上がらせる作品で知られており、有刺鉄線を編んだインスタレーションに布や身近な音などの柔らかい素材を組み合わせ、冷たさと暖かさの対比、異なる意味の重なりを生みだしてきた。本展では横浜美術館内の無料エリアで有刺鉄線を使ったダイナミックな新作を展示予定。
2012年、ウクライナのリヴィウで結成されたコレクティヴ、オープングループ。中心メンバーはユリー・ビーリー、パヴロ・コヴァチ、アントン・ヴァルガで、対話や討論、コミュニティへの参加や協働などの実践を通して作品を制作している。ロシアのウクライナ侵攻によってリヴィウの難民キャンプに逃れた市民を取材し、戦争や紛争の現状をリアルに伝える作品を日本で初公開する。
高須咲恵、松下徹、西広太志によるSIDE COREは、2012年に活動を開始、東京を拠点としている。個人が都市や公共空間のなかでいかなるメッセージを発することができるか、という問いのもと、ストリートカルチャーの思想や歴史などを参照し制作する。ときに他ジャンルの表現者を交えたプロジェクトとして、都市の死角や隙間となる場所で多彩な作品を展開。本展では横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKO の3会場で新作を発表する。
そのほか、ラリー・クラーク、ルイス・ハモンド、土肥美穂、浜口タカシ、長谷川潔、ジョナサン・ホロヴィッツ、北島敬三、ジョシュ・クライン、厨川白村、ステファン・マンデルバウム、森村泰昌、丹羽良徳、小野忠重、尾竹永子、志賀理江子、谷中安規、富山妙子、勅使河原蒼風、佃弘樹、趙文量、鄭野夫らの参加が発表されている。