20世紀初頭、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによって生み出されたキュビスム。このキュビスムに焦点を当てた展覧会「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ 」が、東京・上野の国立西洋美術館で開催される。会期は10月3日〜2024年1月28日。なお、本展は24年3月20日より京都市京セラ美術館に巡回する。
西洋美術の歴史に大きな変革をもたらしたキュビスム。1908年、ブラックの風景画が「キューブ(立方体)」と評されたことに由来するこの手法は、西洋絵画の伝統的な技法であった遠近法や陰影法による三次元的な空間表現から脱却し、幾何学的に平面化されたかたちによって画面を構成する試みだった。さらにキュビスムは、絵画や彫刻の表現を根本から変えることにより、抽象 芸術やダダ、シュルレアリスムへといたる道も開いていく。
本展は、世界屈指の近現代美術のコレクションを誇るパリ・ポンピドゥー・センターよりキュビスムの歴史を語るうえで外せない名作が多数来日。そのうち50点以上が日本初出品となる。主要作家約40人による絵画をはじめ、彫刻、素描、版画、映像、資料など約130点が展示される。
展覧会は、ポール・セザンヌやアンリ・ルソーの絵画、アフリカの彫刻など、キュビスムの多様な源泉を探る「キュビスムの起源」からスタート。ピカソとブラックがそれらを大胆に解釈しながら、緊密な共同作業によってキュビスムを発明する軌跡を追う。
後半では、その後のキュビスムの展開に重要な役割を果たしたフェルナン・レジェ、フアン・グリス、ロベール・ドローネー、ソニア・ドローネーら主要画家たち、キュビスムを吸収しながら独自の作風を打ち立てていったマルク・シャガールら国際色豊かで個性的な芸術家たちを紹介。また、第一次世界大戦という惨事を経て、キュビスムを批判的に乗り超えようとするル・コルビュジエらのピュリスム(純粋主義)の運動や機械美学が台頭してくるまでを展覧する。
本展では、ピカソ12点、ブラック15点が来日し、まとまった作品数でふたりの画家が展開したキュビスムの実験的な営みを追体験できる。なかでもブラックの《大きな裸婦》(1907-08)やポンピドゥーセンターを代表するピカソの《肘掛け椅子に座る女性》(1910)には注目が集まるだろう。
また、ピカソとブラックとは異なるキュビスムの流派を築いた「サロン・キュビスト」の絵画として、横幅4メートルに及ぶロベール・ドローネーの大作《パリ市》(1910-12)も公開。また、初期の傑作《ロシアとロバとその他のものに》(1911)など、シャガールの絵画5点にも期待が高まる。