大岩雄典の個展「可能|Possible」が、美学校が入居するビルの4階に誕生する「PARA 神保町」にて開催される。会期は11月18日〜23日(前期)、11月23日〜27日(後期)。
大岩雄典は、制作、研究、執筆、キュレーションなど多岐にわたって活動する美術家。主な研究・制作の対象として、インスタレーションとフィクションがある。これまでに、漫才や戯曲など様々な言葉の様式を空間に組み込む(インストール: install)ことによって固有の時間感覚を持つ、「空間芸術」を制作してきた。
今回の個展で展示されるのは、「可能な行為の空間」を感覚できるカードゲーム型のインスタレーション作品。CADAN有楽町で開催された「M・THERESIA・D・G・R・IMP・HU・BO・REG・ARCHID・AVST・DUX・BURG・CO・TYR・1780・X」の展示をさらに掘り下げる内容だ。
前期「デバッグ」では完成版とに加え、試作版(《刑吏たち伴奏たち》)が並ぶ。バグを備えた試作版とあわせてプレイすることで、空間あるいは作品が「直る」場面を直感することができる。
後期「インストール」には、ニュートラルな空間としての完成版に、大岩の過去作品をカードにしたものも含む「拡張パック」を加えて展示される。この新たなカードによって可能になる文脈が、鑑賞者のプレイによってのみ実現されるという。
本展に寄せて大岩は、『デューティーフリー・アート:課されるものなき芸術 星を覆う内戦時代のアート』(ヒト・シュタイエル・著 / 大森俊克・訳)の第1章「台座の上の戦車」より次の引用を試みる。
「プレイとは、進行しつつ場面に応じて規則を立て直すこと、あるいは、新陳代謝を求めてやまない規則を創造することなのだ」
言葉・行為やその主体との関係を「空間」という形でとらえてきた大岩。大岩がカードゲームを「空間芸術」と標榜する理由に迫るべく、前後期ともに観賞=プレイしてみてはいかがだろうか。
なお、会場ではカードゲームの販売のほか、松永伸司、宮崎裕助、伊藤亜紗を招いたトークイベントも予定されている。詳細は公式サイトをチェックしてほしい。