EXHIBITIONS

「M・THERESIA・D・G・R・IMP・HU・BO・REG・ARCHID・AVST・DUX・BURG・CO・TYR・1780・X」by Satoko Oe Contemporary × TALION GALLERY

2022.10.11 - 10.30

髙柳恵里 裏返し 2019
「形式と形状展」(CADAN有楽町)展示画像(2020)

大岩雄典「無闇」(TALION GALLERY、東京、2021)での展示風景 撮影=屋上

髙柳恵里「αMプロジェクト2022 判断の尺度 vol. 1 髙柳恵里|比較、区別、類似点」( gallery αM、東京、2022)での展示風景 撮影=守屋友樹

平田尚也「さかしま」(Satoko Oe Contemporary、東京、2021)での展示風景

White Waters [玉山拓郎、C2D]「I ALONE CAN FIX IT」(ANOMALY、東京、2021)での展示風景

 CADAN有楽町では、Satoko Oe ContemporaryとTALION GALLERYによる企画展「M・THERESIA・D・G・R・IMP・HU・BO・REG・ARCHID・AVST・DUX・BURG・CO・TYR・1780・X」を開催。参加アーティストは、大岩雄典、平田尚也、髙柳恵里、White Waters[玉山拓郎、C2D]の4組。

 展覧会タイトルの文字列は、かつてオーストリアで発行され、東アフリカとアラビア半島の一部で広く流通し、コーヒー豆の取引などに1970年代まで使用されることになった「マリアテレジア銀貨」に刻印されていたものだ。そして本展は、2020年にCADAN有楽町で開催された「形式と形状」展での、髙柳恵里の作品《裏返し》にまつわる出来事がきっかけとなって企画された。会期中に訪れた観客のひとりから、髙柳の作品《裏返し》は木彫なのかと問われたエピソードは、会場に居合わせた「形式と形状」展の企画者は驚かせた。

 観客はなぜ《裏返し》を木彫だろうと思ったのか、また、企画者はなぜその質問に驚愕したのか。このエピソードから様々な問いや解釈を導くことが可能だが、ここですでに明らかなことのひとつは、現代美術において、ひとりのアーティストが制作にどのような素材や形式を選択するかは、およそ不確定であることだ。

 本展は、絵画や彫刻といったジャンルに対する脱領域的な作家性の対比を端緒とし、目的論的な必然に対する、時間を含み込んだ蓋然性をテーマとするために、貨幣と芸術のアナロジーを梃子として提示される。

 貨幣と芸術が、ともに人工物であり価値を保存するとされているにも関わらず、再帰的な性質を持つという点で似通っていること、また、経済学が貨幣をつくるのではなく貨幣が経済学をつくるのであり、これと同様に、美学が美術作品をつくるのではなく美術作品が美学を生むという見解のもと、展覧会を構築する。さらに、貨幣と芸術がどのように異なるのかということも重要視する。

 今回の出展作は、インスタレーションや彫刻、映像など多様なメディアで発表される。髙柳恵里は《裏返し》を再び展示し、インスタレーションとフィクションについて制作・研究する大岩雄典は「可能な行為の空間」を感覚するカードゲームなどを提示する。バーチャルな造形操作を用いる平田尚也は、新たな秩序のなかで彫刻を問い直し、そして、玉山拓郎とC2Dによる「White Waters」は概念上の支持体として、社会的な二分法の間隙を縫う作品を発表する。

 商業の中心地であり、また街づくりの一環として国際的な銀行や証券などの金融機関を誘致した歴史を持つ丸ノ内仲通りに面したCADAN有楽町のスペースで、本展「M・THERESIA・D・G・R・IMP・HU・BO・REG・ARCHID・AVST・DUX・BURG・CO・TYR・1780・X」は、交換と価値の蓋然性を問う。