香川・高松市美術館で年に1回開催される「高松コンテンポラリーアート・アニュアル」。12回目となる今年は「フラジャイル/ひそやかな風景」をテーマに、赤松音呂、諫山元貴、稲崎栄利子、北野謙、本田健の5人の気鋭アーティストを紹介。「フラジャイル(fragile=こわれやすい、繊細な)」な表現の魅力に迫る。会期は10月1日~11月6日。
赤松は東京都出身のアーティスト。電子デバイスを組み合わせたインスタレーションや映像、彫刻など、様々なメディアを用いた作品を手がけ、自然や日常生活の中でひそかに脈打つリズムを掬い上げるのが特徴だ。今回出展する《Meteon》(2019)は気化熱の原理によりガラスのオブジェが動き、香川特産の音の鳴る石・サヌカイトの密やかな音を響かせるというもの。
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1987年大分県生まれの諫山は、「崩壊と複製」をキーワードに、制御できない出来事により物質が変化する様子を映像やインスタレーションにより表現。《objects》(2021)は、焼成前の様々な陶器製オブジェを水に浸け、崩壊する様子を映像でとらえたものだ。
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現在高松市在住の稲崎は、独自の繊細な技法により陶芸の可能性を拡張し続けるアーティスト。《現像》(2018)はその超絶技巧により、1ミリ程度の太さの土による細かなパーツを無数に組み合わせ、高さ40センチ弱の山のような造形がかたちづくられている作品だ。
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東京都出身の写真家である北野は、人間の視覚を超えた、人間と宇宙をめぐるビジョンを写真により表現する作家。香川県で撮影された作品《「光を集める」より 香川県土庄町1 2017年冬至-2018年夏至》(2017~18)は、シャッターを半年間開放することで、毎日の太陽の軌跡が線の集積となって描き出されている作品だ。
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本田は山口県生まれの画家。岩手県遠野に移ってからは、同地を拠点に近隣の山野の風景を大画面にチャコールペンシルで写実的に描き続け、自宅や庭の身近な風景を描く小型の油彩の制作も続けている。《山あるき-四月(木下闇の草木)》(2019)は、本田が山歩きの際に撮影した写真に升目を引き、大画面に機械的な手法で巨大化して描きおこす独自の手法による作品。うっそうとした草木の一角に光が射す印象的な風景が描き出されている。
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展示では、関連イベントとして学芸員によるギャラリートークや北野による自画像をガラスに焼き付けるワークショップ、記念コンサートなどが予定されている。鑑賞の際はこれらのイベントもあわせて確認したい。