リヒター作品を巡ってみよう。いま見られる美術館・ギャラリーはここ

日本では16年ぶり、東京では初となる大規模個展がついに開幕したゲルハルト・リヒター。この機会に、リヒター作品を巡ってみてはいかが?

「ゲルハルト・リヒター展」展示風景より、《8枚のガラス》(2012) © Gerhard Richter 2022 (07062022)

「ゲルハルト・リヒター展」(東京国立近代美術館)

 現代美術においてもっとも評価されている現存作家のひとり、ゲルハルト・リヒター(1932〜)。その、日本では16年ぶり、東京の美術館では初となる個展が、「ゲルハルト・リヒター展」(東京国立近代美術館)だ。 

 本展会場構成はリヒター自身が手がけたもの。具象から抽象まで、各時代、各シリーズの作品が場内で入り乱れるような構造となっているのが大きな特徴だ。来場者は自らの目で作品を結びつけながら空間を移動し、リヒターが問い続けてきた「見る」という行為を追走することになる。

 なかでも注目したいのは、初来日した4点からなる絵画作品《ビルケナウ》(2014)。本作はアウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所で密かに撮られた4枚の写真イメージから描かれたもの。黒と白を貴重に、赤と緑の絵具によって塗り固められたこの絵画は、その積層の下に複製写真のイメージが描かれており、鑑賞者である我々は絵画を制作する行為の結果でしか無い作品に塗り込められたイメージから、それが表象するであろう複雑な歴史を想起することになる。

「ゲルハルト・リヒター展」展示風景より、《ビルケナウ》(2014) © Gerhard Richter 2022 (07062022)
会期:2022年6月7日〜10月2日
開館時間:10:00〜17:00(金土〜20:00) ※入館は閉館30分前まで。ただし、9月25日~10月1日は10:00〜20:00で開館。最新情報は展覧会サイトにて要確認
休館日:月(9月19日、9月26日は開館)、9月27日
料金:一般 2200円 /  大学生 1200円 / 高校生 700円 / 中学生以下無料 ※東京国立近代美術館(当日券)、オンライン(日時指定券)にて販売

「ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に」(ポーラ美術館)

「モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に」展示風景より、ゲルハルト・リヒター《抽象絵画(649-2)》(1987)とクロード・モネ《睡蓮の池》(1899)

 2002年に箱根に開館して以来、ポーラ創業家二代目の鈴木常司が戦後約40年をかけて収集したコレクションを公開し、これを基盤として様々な企画展を開催してきたポーラ美術館。その20周年を記念する展覧会「モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に」のハイライトとなっているのが、リヒターだ。

 この展覧会では、70年代後半にリヒターが着手した「抽象絵画」シリーズのひとつであり、スタイルとして洗練を迎えた時期の作品《抽象絵画(649-2)》(1987)を、モネの名作《睡蓮の池》(1899)と並べて展示。太鼓橋としだれ柳が描かれた《睡蓮の池》と、一番奥に水を連想させる鮮やかな青が塗られた《抽象絵画(649-2)》の2点を対比して見ることで、時代を超える作品の不思議な共鳴が感じられるだろう。

 なお、この展覧会ではリヒターの具象絵画《グレイ・ハウス》(1966)も出品。ヴィルヘルム・ハマスホイ《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》(1899)とともに、暗い展示室のなかで静かに佇んでいる。

「モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に」展示風景より、ヴィルヘルム・ハマスホイ《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》(1899)とリヒター《グレイ・ハウス》(1966) Photo (C)Ken KATO
会期:2022年4月9日~9月6日
開館時間:9:00~17:00 ※入館は16:30まで
休館日:会期中無休
料金:一般 1800円 / 大学・高校生 1300円 / 中学生以下無料

「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」(国立西洋美術館)

「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」展示風景より、左からクロード・モネ《舟遊び》(1887)、ゲルハルト・リヒターの《雲》(1970)

 今年4月にリニューアルオープンした国立西洋美術館で開催中なのが、自然と人の対話から生まれた近代の芸術の展開をたどる展覧会「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」だ。

 この展覧会はドイツ・エッセンのフォルクヴァング美術館との協働によるもので、両館のコレクションから印象派とポスト印象派を軸にドイツ・ロマン主義から20世紀絵画までの100点を超える絵画や素描、版画、写真が一堂に介している。

 絶えず変化し続ける自然の諸相をテーマに、「雲」「風」「雨」「雪」「霧」などの気象を表現した作品が集まる第1章「空を流れる時間」。このセクションで見られるのが、リヒターのフォト・ペインティング《雲》(1970)だ。展示はポーラ美術館と同じように、隣にモネの作品《舟遊び》(1887)並ぶ。画面中央に配された彼女たちの姿とその水面の反映像が実像と虚像のコントラストを強調した《舟遊び》と、写真をもとに雲を描いたソフトフォーカスの写真のようにも見える《雲》。2つの作品から、到達できないユートピアとしての青空への憧憬が喚起される。

会期:2022年6月4日~9月11日
開館時間:9:30~17:30(金土~20:00)
休館日:月 (7月18日、8月15日は開館)、7月19日
料金:一般 2000円 / 大学生 1200円 / 高校生 800円 / 中学生以下無料

「Gerhard Richter Drawings 2018-2022 and Elbe 1957」(WAKO WORKS OF ART)

 リヒターの最新作を見られるのが、六本木のギャラリー「ワコウ・ワークス・オブ・アート」での個展だ。

 リヒターによる同ギャラリーでは12度目の個展となる「Drawings 2018–2022 and Elbe 1957」は、タイトル通り、リヒターのドローイングにフィーチャーしたもの。2018年から2022年に描かれた新作のドローイング作品18点に加え、65年前に制作された31点組の版画作品《Elbe [Editions CR: 155]》のエディション版が日本で初めて公開される。

会期:2022年6月11日~7月30日
開館時間:11:00~18:00
休館日:日月祝
料金:無料 ※予約制

編集部

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