アジア諸国の歴史的・社会的課題をテーマにした現代美術に注目する「アジア・アート・ビエンナーレ」。その第8回目が、10月30日〜2022年3月6日に台湾・台中の国立台湾美術館で開催される。
今年のビエンナーレのタイトルである「Phantasmapolis」は、台湾の建築家・王大閎(ワン・ダホン)による英語のSF小説『Phantasmagoria』に由来するもので、ギリシャ語で「幻影」を意味する「phantasma」と「都市」を意味する「polis」を組み合わせた新しい造語だ。
キュレーターチームは、タカモリ・ノブオ(台湾)、ホー・ユークアン(台湾)、テッサ・マリア・グアゾン(フィリピン)、アヌシュカ・ラジェンドラン(インド)、タナヴィ・チョットプラディット(タイ)の5人によって構成。「アジアの未来派(Asian Futurism)」と「アジアのSF文化(Asian Sci-fi Culture)」をメインテーマに、15ヶ国から38組のアーティスト/アーティストグループを招聘し、SF的な視点からアジアの過去と現在を再考する。
タカモリはキュレーションノートで、「アジアの主要都市は、世界と未来をつなぐ架け橋であり、それ自体が近未来の世界の縮図でもある。(中略)展示作品を通し、アジアの近代性はユートピアとディストピアが重なり合う場所であり、(中略)過去と未来、外国とテクノロジー、幻想と現実、謙虚さと栄光を有機的に結びつける場所でもあると言えるだろう」と記している。
展示作品の選定について、タカモリは「美術手帖」に対して次のように語る。「キュレーターチームは、近代のパイオニア・アーティスト、現代アーティスト、アーカイブ・プロジェクト、ビデオ・アート・プログラムを組み合わせて企画した。アーカイブ・プロジェクトと(近代の)パイオニア・アーティストの部分では、未来というテーマにおいて秘められた先進的な表現を引き出すことを目指している。現代アーティストの部分では、それぞれの視点と文化的伝統から『未来』を表現してもらいたい。最終的にはこのテーマの多様性を示していると考える」。
日本からは、毛利悠子がピアノ・インスタレーション、磯村暖×海野林太郎がメディア・インスタレーションの新作を発表。ビデオ・アート・プログラムでは宇多村英恵が作品を展示し、映画監督・荻野茂二の短編アニメーション『百年後の或る日』(1933)も上映。そのほか、写真家・平田実と木村恒久による1960年代の写真作品も展示される。
国立台湾美術館館長・梁永斐(リャン・ヨンフェイ)はステートメントで、「世界的なパンデミックが私たちの生活や世界との関わり方に大きな影響を与えているなか、2021年のアジア・アート・ビエンナーレの開催は、同ビエンナーレの歴史だけでなく、アジアのアートシーンの発展にとっても重要な節目となるだろう」としつつ、次のような期待を寄せている。
. 「私たちは、この地域の現代アートの創作を支援し、育成するユニークなプラットフォームとしての役割を果たし続けることを願っている。そして何よりも、作品と展覧会が、鑑賞者がアートの力で考え、交流し、体験し、回復できるような空間をつくりだせることを願っている」。