リサーチをもとに映像作品やパフォーマンスを発表してきた、現代台湾を代表するアーティスト・許家維(シュウ・ジャウェイ)と、オブジェや映像、生身の俳優を組み合わすシンガポール出身のホー・ツーニェン。そのふたりがキュレーターに務める、第7回アジア・アート・ビエンナーレが10月5日より、台湾・台中の国立台湾美術館で開催される。
「The Strangers from Beyond the Mountain and the Sea(山と海を越えた異人)」をテーマにした今回のビエンナーレでは、李禹煥や田村友一郎、林育榮(チャールズ・リン・イー・ヨン)など、16ヶ国30組のアーティストによる絵画やインスタレーション、映像、パフォーマンス、ワークショップなど、幅広い作品が展示される。
「異人」とは、遠隔地からの旅行者だけでなく、霊魂、神、シャーマン、外国商人、移民、少数民族、入植者、密輸者、遊撃隊、スパイ、反逆者をも指す。「異人」という視点を通し、既存の知識体系の限界や現実を理解する枠組みを広げ、鑑賞者の想像力と好奇心を刺激することを目指す。
許は「私たちは、人間の活動が気候や環境に支配的な影響におよぼす、いわゆる近年提唱された『人類世』という地質年代に生きています。これは、人間中心主義――人間は道徳的な地位の唯一の、あるいは第一の保持者であるという観点――に対する批判的な考察につながっています」とコメント。今回の展示作品からは、このような考察を垣間見ることができるという。
また今年のビエンナーレでは、丁昶文(ティン・チャンウェン)、王虹凱(ワン・ホンカイ)らによる9つのコミッション作品も登場。ホーは、「許家維も私も、ビエンナーレの目的はたんにアート作品を展示することだけではなく、もっと重要なのは、アーティストと一緒に新しい作品をつくり、未知のものを探求することだと考えています」とコメントしている。