近年ではトルコのオドゥンパザル近代美術館や角川武蔵野ミュージアムのほか、東京オリンピック・パラリンピック2020のメイン会場として予定されている国立競技場の設計への参画で注目を集める建築家・隈研吾。
その大規模な個展「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」が、隈が2004年にデザインした長崎県美術館で開催されている。会期は3月28日まで。
本展では、隈建築のなかから「公共性」の高いものを中心に30件を選び、隈自身による作品解説とともに紹介。「孔」「粒子」「ななめ」「やわらかい」「時間」という隈が考える5原則によって分類し、模型や写真、モックアップのかたちで展示される。
また、瀧本幹也、藤井光、津田道子、マクローリン兄弟といったアーティストが、隈建築の造形性だけでなく、いかに街と関係を結んでいるかをとらえた映像作品を制作。360度VRで、内部空間をリアルに体感することもできる。
加えて、ネコの視点から都市を見直すリサーチプロジェクト《東京計画2020 ネコちゃん建築の5656原則》も発表。現代に必要なのは、高度経済成長期のように都市を上から見るのではなく、下から見ることであると考える隈が着目したのは、ネコの視点だ。本展では、Takramとの共同によって東京・神楽坂でのフィールドワークやGPS測定を実施し、その成果を3DCGやプロジェクションマッピングを用いて展示する。
新築の庁舎からリノベーションによる居酒屋まで、「公共性」という概念を広くとらえて行われる本展。新たな公共性や未来の都市のあり方について考える機会となるだろう。
なお本展はこの後、東京国立近代美術館(6月18日~9月26日)へ巡回。展覧会の公式ウェブサイトでは、隈が設計した建物の施主やそれに準じた人、あるいはそれをメインで使用している人に話を聞く「復興と建築をめぐるインタビュー」も順次公開予定となっている。