明治から大正にかけて活躍した画家・渡辺省亭。その国内の美術館では初となる待望の回顧展「渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-」が、東京・上野の東京藝術大学大学美術館で開催される。会期は3月27日~5月23日。
1878(明治11)年の万博を機にパリに渡り、ドガをはじめ印象派の画家たちと交流した経験を持つ省亭。繊細で洒脱な花鳥画は海外で高い評価を得、国内でもその実力は認められていたものの、明治30年代以降は次第に中央画壇から離れて市井の画家を貫いたため、展覧会で紹介される機会は少なくなった。本展では初公開の個人コレクションのほか、メトロポリタン美術館からの里帰り作品など、厳選された作品でその画業を振り返る。
省亭の特徴は、日本的な情緒を重んじる美意識と西洋的な写実の融合。四季折々の花鳥画を12幅の連作にまとめた大作《十二ヶ月花鳥図》(展示期間は4月27日〜5月23日)や、精緻な表現で生き生きとした動物を描いた作品は、その白眉といえる。
本展では、ドガの目の前で描かれ贈られた《鳥図(枝にとまる鳥)》(1878)など、貴重な初来日の作品も展示。また、省亭が下絵を描き、濤川惣助が七宝額絵として制作した《荒磯鶚図額》は、最近の研究で1889(明治22)年の第4回パリ万博の出品作であることが判明した作品だ。
加えて今回は、国宝・迎賓館赤坂離宮の「花鳥の間」をいまも華やかに彩る渡辺省亭・濤川惣助の共作による七宝額絵の原画も紹介。そして花鳥画だけではない省亭の魅力として、独特の品格をもち、後の鏑木清方らにも大きな影響を与えた美人画の数々も初公開される。
今年3月には豪華画集の刊行も予定されており、数年前から入念な作品調査が行われてきたという日本美術の知られざる名匠・省亭。本展でその豊かな作品世界を堪能したい。