木、草、土、石など、多様な自然素材を優れた造形物へ昇華させた日本の伝統建築。建築模型や図面、道具など貴重な資料の展示を通して、古代から現代までその造形的な特徴を紹介する「日本のたてもの ―自然素材を活かす伝統の技と知恵」展が、東京国立博物館(12月24日~2021年2月21日)、国立科学博物館(12月8日~1月11日)、国立近現代建築資料館(12月10日~2月21日)の3館で開催される。
日本では、法隆寺国宝修理事業の一環として金堂と五重塔の模型を制作したことを契機に、1960年から国の「模造事業」がスタート。64年には、東京五輪にあわせて開催された「日本古美術展」にも模型が出展された。本展ではこれらの模型に加え、原建物が国宝・重要文化財である模型を核として、これまで一般に公開されることのなかった貴重な建築模型を一堂に展示する。
東京国立博物館のテーマは「古代から近世、日本建築の成り立ち」。唐招提寺、東大寺、法隆寺五重塔などの10分の1模型は複数に分割できるものもあり、室内の様子や天井裏といった細部には匠の技が光る。また同館では、2019年に焼失した首里城正殿の模型も展示。これは戦前の修理に従事した大工の知念朝永氏が製作したもので、沖縄県外への出品は今回が初となる。
いっぽう国立科学博物館では「近代の日本、様式と技術の多様化」として、近代以降の建築を紹介。明治時代に入ると、西洋建築の輸入によって煉瓦、コンクリート、ガラスといった新たな材料や意匠が現れ、様々な建築模型が誕生。同館では、こうした新たな社会制度の導入に伴ってつくられた議事堂や庁舎、フランク・ロイド・ライトによる帝国ホテル旧本館、そして安藤忠雄の代表作「光の教会」などの建築を模型から総覧する。
そして国立近現代建築資料館では、大工技術を中心とした工匠の近代化を追う「工匠と近代化―大工技術の継承と展開―」を開催。2020年12月にユネスコ無形文化遺産の認定を目指す「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」を、貴重な図面や模型、大工道具で紹介する。また、木造建築を受け継ぐための伝承者養成・技能錬磨・原材料や用具の確保など、近年の取組みについても知る機会となる。